THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

「王様の速読術」斉藤 英治

 

王様の速読術

王様の速読術

 

 まず一冊の本と付き合う時間を三十分と決めてしまう。(中略)「この本を読むぞ」と決める人がいる。その意気込みはいい。だが、そこにはなんの戦略もない。私たちが何か成果をあげるとしたら、そこには勝算がなければならない。それなのに、本に関しては、多くの人が最初から降参しているようなものだ。(本文より引用)

   この本、「速読術」をタイトルに持ってきていますが、内容は「高効率読書術」です。速読の本では、ない。真のタイトルは、「30分で一冊把握法」かな。なんて売れそうもないタイトルなんだ。そりゃ、「王様の速読術」にしたくもなるでしょうが、でもとにかくタイトルからして違和感ある。

  この本の要点は、「30分で一冊読むと決めて戦略を練って読書しましょう」ということに尽きる。

 上司に「専門書10冊渡すから、明日までにこの分野の概要は理解しておけよ」と言われたらどうするか。10冊まじめに読んでる時間なんてない、そうなったら人間自然と手抜きなりなんなりしてでも、目的を達成することを考えるはず。筆者は、常にそういった集中力と目的意識を以って読書に臨めば驚くほど有益な知識の蓄積ができる、と言っている。

 具体的な方法を書いてしまうと、この本の存在意義が無くなるくらい簡潔。書いてしまっていいんでしょうか。書いてしまいましょう。

 

 「30分で一冊読む方法」

1)プレビュー(5分)

目次を精読し、本の構造を知る。プレビューでそれが最重要。表紙やカバー、帯もチェック。残った時間で本文をパラパラとめくる。見出し、絵、図など目につくところ中心で雰囲気を感じる程度でいい。なにやら、気になるところがあったら、付箋を貼る。

 2)写真読み(5分)

見開きを2秒で全ページ、パッパッと眺めて行く。読もうとせず、ひたすら機械的に目に入れる。 本の構造やイメージ、キーワードが自分では意識できなくてもダイレクトに脳に入ってくる。数をこなせばこなすほど、この過程は意味を持つようになってくる。

 3)スキミング(20分)

1)と2)で構造はだいたい把握できているはずなのだから、ななめ読みしながら、大事なところだけ精読せよ。

 

 以上が、「1冊30分で必要な知識を吸収」のやり方。あまり具体的な説明は無く、「この方法を何度も行えば習熟度が増してきて、効果が感じられるはずです」というにとどまっている。

 なるほど。この本みたいな情報がスカスカな本だったら、このやり方でいけます。読者の知りたい点は、ほんの数ページにまとまる程度で、そこに読書と速読の大切さ、偉人・有名人の成功談、本選びのコツ、時間管理の大切さ、読んだ本の知識の活かし方などを加えて膨らませているだけ。同じことを言葉を替えて、何度も描いている箇所も気になった。 この本から速読のことだけ知りたい方は、要点を押さえて読めば確かに30分で充分足りる。 52ページから93ページくらいを精読して、あとは斜め読みでよい、ということになってしまう。王様と謁見者の会話も、読まなくてだいじょうぶ。著者として、こんな読み方されていいんだろうか・・・。それなりに頑張って書いたはずだと思うんですけど。

 好きな作家の本とかエッセイをこんな読み方は絶対にできない。とりあえずチェックしなくちゃいけない雑誌とか資料とか、知識・教養のための実用書とか、自分の喜び以外の部分で読む本だけに適用できるやり方だと思う。

 この本の好きなところ、というか、さすが生産性の高い人らしいなと感じたのは、89ページの記録表。上記の「30分で一冊法」を試してみるなら、負担にならない程度の記録表をつけよ、と筆者は言う。日時、本の題名、ページ数と概算文字数(1行の文字数と代表的な1ぺーじの行数の積で算出)、平均スピード(分速=概算文字数/かかった時間を分に直した数値)と簡単なメモのみ。実際にやってみて気付くこともあるし、進歩を感じられなければマンネリを招く。数値なんか正しくなくていい。むしろ多めに書いて、達成感を味わって楽しくなればいいとのこと。 著者曰く、“速読は楽しくやらなければうまくいかない。脳が柔軟な状態、つまり楽しいときこそ、速読の威力も十分に発揮されるからである”。 どうせなら、筆者や筆者がコーチしている方々によるこういった記録を基にした、成功や挫折のデータを入れてくれればよかったのに。

 しかしまあ、マメなんだかテキトーなんだか微妙なのに、全体的に見るとなんか前進しているし、残るものもちゃんと作り出しているんですよね、こういう本を出す方たちは・・・。時間の使い方がうまい人特有の生産性にちょっと触れたいという方は、本書を是非「斜め読みで」どうぞ。 

 今のところ、この本のやり方が適用できそうな本が手元にないんですけど、機会があったらその後、実際に私がこの方法をやってみての感想を載せられたらと思います。