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「未来の年表 人口減少日本でこれから起こること」河合雅司

 

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

 

  要するに、国家が滅びるには、銃弾一発すら不要なのである。「結婚するもしないも、子供を持つも持たないも、個人の自由だ」と語る人々が増え、子供が生まれなくなった社会の行き着く果てに待ちうけるのは、国家の消滅である。(「はじめに」9ページより抜粋)

 第一部の「年表カレンダー」に対して、第二部の「日本を救う10の処方箋―次世代のために、いま取り組むこと」には、三分の一くらいの量しか割かれていないことからして、この本は対策を講じる本ではなくて、現状への警鐘を鳴らすことが目的の本であるのだろう。 

  なので、全編に渡って、これでもか!これでもか!というように、「もうこのままでは、日本は終わりだ!!ほらほら、年寄りだらけの国は、こんなに悲惨なんだぞ」というような悲観的な文章がデータとともに、畳みかけてくる。自分の属する世代が、この少子高齢化の一番の根源のような書かれ方をしているので、「生きていてすみません、生まれてきてすみません・・・」というような気分になる。読み終えるのが、正直大変だった。

 しかし、ところどころに、なるほどそうなのか、と感じさせられる文章もあり、そういった箇所を頼りになんとか読み切った。 例えば、

・「少子高齢化」とよく言われるが、社会の「少子化」と「高齢化」はまったく別の問題。少子化問題が解決しても、平均寿命の延びにより、社会の高齢化は進む。二つの問題を分け、別の対策を考えるべき。

・「秋田ショック」と言うが、秋田のような消滅の危機にあると言われている地方都市は、考えようによっては逆にチャンス。かつての若者の人口が都会に流れ過ぎてしまったせいで、これ以上人口は減りようがなく、急速な高齢化が起こらない。逆に地方から流れた若者がどんどん高齢者となっていく東京のほうが、先は悲惨。秋田は、既存の高齢者向け施設をうまく使っていけば、少なくとも病院や施設に入れないお年寄りが街に溢れるような事態にはならない。

 などなど。

 残念に思うのは、この本があまり世界に目を向けていないということ。少子高齢化は、他の先進国でも起こっている問題だと思うので、他国の事例をもっと知りたかった。また、「世界史において、類を見ない急速な少子高齢化」と書かれてはいるが、そのスピードはともかく、ローマ帝国時代の文化成熟期にも少子化問題はあり、帝国衰退を食い止めるべく皇帝が政策を練っていたということを最近別のソースから知った。そうした、他の時代や他国の情報も含めて欲しかった。 そこから、なにかしら得るもの、考えさせられるものがあるはずである。

 現状に危機感を持つという点においてはすごく有意義な本であるけれど、いたずらに恐怖と不安を煽られ絶望するだけで終わっても意味が無いように思う。 これは、あくまで物流やテクノロジーや、医療、政策がほとんど今と変わらない世の中に、人口動態で予測できる事実をあてはめているだけなので、本当のところは、未来はやはり誰にもわからない。 この本よりましな未来かもしれないし、悲惨なことが起こっているかもしれない。

 そして、少子化も高齢化も、人間一人一人が健康や幸せを追い求めてきた結果の姿なので、たとえ国家が衰退したとしても、「姥捨て山」や「意にそぐわない結婚を強いられる」というような時代よりも、ずっとましなんじゃないかというのが、私の考えである。

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