THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

『New Kid』(By Jerry Craft)

 (※↓↓以下の記事の中の表紙に関する批判は、作品の内容を理解していない的外れで失礼な批判でした。とても後悔し作者の方に申し訳なく思っています。消すべきなのかもしれませんが、別記事に反省と謝罪とまとめました※)
ISBN:978-0062691200:detail
 小学校中学年から高学年くらいの子向けのGraphic Novel。表紙の絵やコピーから、中学校の転入生の日々が書かれた物語なんだろうと思って読み始めたけれど、それは物語の設定のひとつに過ぎず、表紙は一番重要な情報を外している。これは、「黒人」少年が白人の集団に入って行く時の悩みや葛藤の物語といっていい。
 そうかそういう話か、と数ページくらいでわかり、また人種差別うんぬんの話か~楽しめるかな、と不安になったけれど、素晴らしい読後感。読んでよかった。主人公の新しい学校での最初の一年が、淡々と暖かく明るくユーモアたっぷりに描かれている。主人公の友人たちも、読み進めるうちにそれぞれ愛しく思えてくる。主人公の家族との関係も素晴らしい。「Hey, Kiddo」を読んだ時も思ったけれど、結局、愛情あふれるきちんとした大人のそばで育ったかどうかで、いろいろ決まるのかなと思わされる。

 しかし、アメリカで黒人がどういう位置づけかわからないと、ぴんと来ない物語かもしれない。アメリカでは黒人と言うだけで、貧困、シングル・マザー、バスケットボール、ギャング・・・などなど、全般的にネガティブなステレオ・タイプにあてはめられてしまう。そのくやしさやもどかしさが随所に出てくる。そんな中、心優しく誠実な主人公が、少しずつ周囲を変え、そして自分も変わっていく。タイトルのNew Kidは、「学校に新しくやって来た子」という意味と「変化して新しくなった子」という二つを表しているのが、読み終わるとわかる。

 それにしても、黒人少年の物語だという情報は、あえて表紙や作品紹介からはずしたんだろうか。表紙の主人公の少年の絵も、肌が白っぽく描かれているのが気になる。彼は、黒人の中でも肌が黒くないほうだというような話も作中に出てくるけれど、これでいいのか。これは本当に作者の希望した通りなのだろうか。 確かに、表紙で「黒人少年の物語ですよ」という情報を積極的に出したら、本を手に取ることすらしない子供も多いだろう。悲しいけど、それは真実だと思う。作中にも「黒人文学」に関するエピソードが出てくるし(Drewの主人公への最後のプレゼントには笑った)、たくさんの人に読んでもらうにはこうするしかなかったのか。私も、そういう話だと知っていたら買わなかったかもしれない。黒人少年の物語というだけで、なんとなく「共感できるかな」と、読む前から距離を感じてしまう。自分とは違う世界の人間の話だと思ってしまう。差別では無く、区別。アメリカに住んでいて、人種に関してはそれを一番感じる。

 あと、アメリカで「日本では、クリスマスにケンタッキー・フライド・チキンを食べるんだ」と言うと、ジョークとしか思ってもらえないんだけど、この本でもやはりKFCの扱いは・・・。 たまに食べるとおいしいのにねえ。
ISBN:978-0062691200:detail