THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

「顔」 横山秀夫

ISBN:978-4198922337:detail
 また、横山秀夫さんです。
 大ファンというわけではないんですけど、前回日本に帰った時になんとなく中古で大量に買ってしまったんですよね。嫌なことがあった時に、夢中になって一気読みできる小説が欲しくて。
 でも、これは読み出したら止まらない系(英語ではunputdownableって言うんでしたっけ?)の本では無かったかな。似顔絵担当の婦警を主人公にした短編連作集です。 物語があって彼女がその中にいるというより、まず彼女ありきで話を後からくっつけた感じがします。 彼女が関われる事件やミステリーを考えるのがきっと大変だったんだろうなあという苦心の跡が読者の私にも少し感じられてしまって残念。すべての警察官にそうそうドラマチックな出来事があるわけじゃないですもんね。 
 そうしてひねり出された彼女が関わる事件や謎よりも、女性として警察と言う組織で仕事する際の葛藤や心の揺れの部分の方が読んでいて面白かった。一番生々しかったのは、飛び降り自殺者の死体の似顔絵を書くところの瑞穂の心情でしょうか。

死人の顔を描く。父や母には見せられない姿だと思った。

「顔」「心の銃口」272ページより

 警察官でもあると同時に、当然誰かの娘でもあるんですよね。親に絶対に言えないような危険ことや残酷なことを仕事としてやらねばならない、主人公のその微妙な罪悪感やうしろめたさがやけに現実的でした。 本当に、本当に警察官は大変なお仕事ですね。仕事の内容も大変だし、組織的にめんどくさそう。 警察官の皆さん、警察官になって下さって本当にありがとうございます。私には、無理です。

 でも、やっぱりいつもの横山秀夫さんです。会話がやたらドラマチック過ぎると言うか熱くるしいというか。 特に女性の口調が、なんか変。23歳の女性警察官が警察の相談窓口電話で、「いいのよ」「ステキな名前ね」「私これでも強いのよ」とか言わないと思います。 いくら相手が年下でも、「いいよ」「ステキな名前だね」「私これでも強いんだよ」です! 「~なのよ」じゃなくて、「~だよ」「~ですよ」 です!!! なんか小説に出てくる女性の口調が、いかにも『男性が女性にこうしゃべってほしいと望む口調』なんですよね。 それとも、横山さんの周囲の女性は、お上品な方ばかりなんでしょうか。 楽しく読んでいても、いつも会話のところでスーッと冷めてしまうこの残念さ。

 横山さん、是非今度は女友達に電話して「この口調で大丈夫?自然?」ってチェックして下さい。お願いします。