THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

「女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと」 西原理恵子

ISBN:978-4041049785:detail

ひたすら「我慢すればいい」っていうのは、次の一手を打つことを、はなっから諦めてしまうこと。考えることを投げ出してしまうこと。

『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』「母と娘のガチバトル」28ページより

病気のボーダーラインというのがあります。
借金してパチンコしたら、ギャンブル依存症です。飲酒運転し始めたら、アルコール依存症です。子どもの前で本気で夫の悪口を言うようなら、それは別れましょう。

『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』「夢見る娘とおカネのハナシ」70ページより

優しくていい子ほど、自分のことは後回し、人に幸せを譲る。
譲られた人はどう思うか? 感謝なんかしない、得したと思う。
そして次からそれは当然になる。

『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』「女の子が生きていくときに、覚えていてほしい5つのこと」129ページより

 娘に読ませようかと思って先に読んでみました。
 名言の宝庫ではありますが・・・。Amazonのページでは「西原さんのイラスト+言葉」のカットがいくつか載っていたので、そういうスタイルの本かと思いきや、まるで西原さんが飲み屋で若い女の子とか子育て中のお母さんに「まあ、あたしくらい苦労した女もいないでしょ」とか語っている内容を口述筆記したかのような文体で、ほぼ文字だけ。ページの下半分はラノベのようにスッカスカ。まあ、30分もあれば読み終わります。だったら絵も入れてよ!と思うんですが。 やはり西原さんの名言は、あの独特な絵と合わさってないと味が出ないといいますか、単なるおばちゃんのお説教になってしまうように思います。 このお値段だったら、ちゃんとした紙にして絵もたくさん入れて、誰かにプレゼントしたくなるような感じにしてほしかった。 
 おっしゃっている内容は、本当にもう「ごもっとも」という感じなんだけど、西原さんがターゲットにしたいような子たちはこの本をそもそも手に取らないのではないかと思います。逆に、この本を自ら読んだり、周囲にプレゼントされたりして読む子は、本書で西原さんが言いたいようなことはとっくに承知しているのではないかと。いまどきの子たちって、情報があふれているせいかしっかりしてるから。 
 自分の人生を人任せにするな!
 常に自立せよ!戦略的であれ!
 誰かの犠牲にならず自力で幸せになることに注力しろ! 
 まとめると主旨はこんな感じでしょうか。 それができるならとっくにやっとるわい!!!!!と、若いお嬢さんの時期はとっくの昔に通り過ぎた私は、心の中で毒づきました。 それがうまくできないからみんな苦労してるんでしょうが。 西原さんみたいに才能や特技があって、美人でモテモテの女子ばかりではありません。 それに、家族の事情でどうしても職を捨てるしかなかった人とかもいるのでは? もっと弱く、どうにもならない立場にいる人もいるわけで・・・。 
 オリンピックで金メダルとった人に「私が出来たんだから、あなたもできる!」と言われているような虚しさを感じなくもありません。 西原さんのこのエールで、「よしがんばろう!」と思えない真っ黒な心は、やはり加齢のせいなのか。若ければ、心に響くんでしょうかね。
 子育て中のお母さんに送る言葉や、自分の子育ての思い出なんかも、ポエムのように随所に登場します。 現在子育て中の私には興味深いものもあったけれど、この本って「女の子」が生きていくときに覚えていてほしいことが書かれているんじゃなかったっけ・・・? いやいや、母になろうがおばあちゃんになろうが「女の子」なのかもしれないけど、なんかターゲットがあやふやな本になっているような。娘に読ませるには向いていないように思うし、私が読むと前述のように「すいません、がんばったんですけど、もろもろの理由でもう手遅れな状況でございます」と冷めた気持ちになってしまう。 ちょっと中途半端な本です。 
 そして、その子育て中のお母さんに送る言葉も、本当にありきたりで、子育てを終えたお母さん10人中9.5人くらいが言う「母を求めてくれるかわいい時期は一瞬で終わるのよ! その時間をもっと大切にすればよかった!!!」なんですよ!! あの西原さんでもそれを言う!!! きっと、ここまで皆さんが同じことを言うということは、それが真実であることにほかならないと思うんですが、やっぱりそれって終わったから言えることなんですよね。渦中にいる人に「だから、あなたもその時間を大切に」と言っても、「はいはい、またか」です。 確かに子育て中は大変過ぎて「いつか終わる」ということが見通せなくなりがちなので、誰かに定期的にこの言い古されたフレーズを繰り返してもらうのは、大切な事なのかもしれません。でも、西原さんがやる必要無いって言うか、西原さんならもっとほかのこと言うだろうと思っていた。物足りない。
 西原さんにはこの本よりむしろ、「男の子が生きていくときに、おぼえていてほしいこと」という本を書いていただきたい。長年、青年誌で大人気だった西原さん、男性諸君に訴えるべき言葉をたくさんもっていらっしゃると思うのです。 女の側にだけ呼びかけてもね。 男も女も相互に関係しあって生きていると思うから。