THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

「ナオミとカナコ」 奥田英朗

 ナオミとカナコは、完全犯罪を成し遂げて新しい人生へ逃げ切ることができるのか? 
ISBN:978-4344026728:detail
 親友同士の女性二人が主人公のハラハラドキドキのサスペンスです。
もう直美と加奈子の友情に感動しちゃいました~・・・ってなるわけなーーーい!! こ、これは・・・どうしちゃったんですか、奥田先生。大好きなのに! 楽しめなった自分が悲しい。一気読みできましたが、納得いかない感だけが残りました。アマゾンのレビューでの評価はすごく高いんですね。なぜ!? これを奥田大先生の最高傑作にしてないでほしい。絶対違う!!
 まず、なぜ殺す!? 唐突過ぎます。女に暴力振るうような奴は死んでもいい、ということでしょうか。心情的には理解できますが、殺すのは心の中でだけでしょう。もしくは、社会的な抹殺でいいでしょう。殺人を実行する前にまだまだできることがあるはず。すべてやってどうしてもだめだった時の最後の最後の手段では? 計画的に殺人を犯すなんて、自分自身のことも社会的に殺すリスクを負ってるんだから、そう簡単にできるわけが無い。 あれほど賢い直美がなぜ短絡的にそこに行けるのか。加奈子も「うん、そうしよう」となるのか。 二人の間にそれほどの友情も感じないし。
 そして、そのあとの犯罪の計画もあまりにずさん過ぎて、もう読んでいられなかった。やっぱり、犯罪を犯す側も、暴く側も両方頭が良くないとおもしろくないです。
 この小説を読んでいて、東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」を思い出しました。あれも、DVがきっかけの殺人ですよね。でも、「相手の暴力に恐怖にかられて、無我夢中で殺してしまった、どうしよう」というまだ理解できる状況での殺人だった。決して、計画的にやったわけではない。しかも、殺された相手が同情の余地ないくらいのろくでなしに書かれていて、冒頭から一気に殺してしまった側に感情移入できたことを覚えています。 その犯罪を隠蔽する側、暴く側もものすごく頭が良くて読みごたえがありました。
 でも、この小説は犯罪の動機も中途半端、やり方も中途半端、犯罪を犯した後の二人の変化にも付いていけなかった。
 唯一、楽しく読めたのは、直美の高級百貨店の外商部での仕事、中国人社会との関わりの部分でしょうか。

「わたくしどもは、まだ謝罪の言葉をいただいてません」
 直美が告げる。しばし沈黙が流れた。別に謝って欲しいとは思わないが、目の前の女社長を一度屈服させたかった。
 李朱美が顔を上げ、早口で言った。
「前にも言いましたが、この時計はただと思いました。たから持ち帰ったのことですね。つまり誤解だったわけです。わたしは盗っていません」
「どこの世界に、三百万円もする腕時計をただでプレゼントする百貨店があるというんですか?」
「中国と日本の関係は特殊です。かつて戦争で日本人は中国人をたくさん殺しました。たからそのお詫びにいろいろくれるものと中国人はみな思てます」
 あくまでも強弁する李朱美に、直美はある種の感動を覚えた。中国人が絶対に謝らないというのは本当なのだ。

「ナオミとカナコ」奥田英朗 文庫版108ページより

いつも奥田英朗さんの小説で、「世の中にはこんな仕事があるのか!こんな世界があるのか!」と自分が決して経験することがないであろう職業を疑似体験させてもらっていますが、今回もとても面白かった。 どうやって、毎回こんなにいろんな仕事のことリサーチしているんでしょうね。どの職業も、現場の生々しさが伝わってきて、本当に興味深い。これだから、奥田英朗さんの小説は読むのがやめられないんですよね。