THE X-CHAPTERS / Xチャプター

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トイ・ストーリー4公開記念! 『To Pixar And Beyond』by Lawrence Levy (日本語版題名:PIXAR <ピクサー> 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話)

ピクサー社の元CFO、ローレンス・レヴィ氏による回顧録。著者は、『トイ・ストーリー』の第一作が公開される一年前から、ディズニーがピクサー社を買収する時期まで、ピクサーのCFOや取締役だった。

To Pixar and Beyond: My Unlikely Journey with Steve Jobs to Make Entertainment History (English Edition)

To Pixar and Beyond: My Unlikely Journey with Steve Jobs to Make Entertainment History (English Edition)

  • 作者:Lawrence Levy
  • 出版社/メーカー: Mariner Books
  • 発売日: 2016/11/01
  • メディア: Kindle版
ISBN:978-4866511139:detail
著者が最初に断りを入れている通り、ストーリーチームやCGアニメーションなどピクサーの華やかな部分の話は少ない。「いかにお金の工面をしたか」、「自社に利益をもたらす契約をどう結んだか」、「ジョブズは何を期待し、どう行動したか」、そういった裏話と著者の自分探しが内容の中心だった。
いわゆる『ビジネス書』なんだろうけど、株や経営や財務に全く明るくない私にもわかるように書いてあって助かった。非公開の株式を公開するとはどういうことか、投資銀行はその際どういう役割を果たすか、株式公開までにどんな過程があるか、そういった基礎知識に触れながら、ピクサー社のケースを振り返ってくれて勉強になったし面白かった。でも、逆にその分野に詳しい人には、冗長で物足りないところもあるかもしれない。英語も比較的平易だったように思う。
本書は、キャリアの下り坂の真っ只中で既に「過去の人」扱いだった時期のスティーブ・ジョブズからの一本の電話で始まる。著者がそれまでの順調なキャリアを捨て、当時は無名の小さな会社であったピクサーの一員となり、社運をかけた一大プロジェクト『トイ・ストーリー』の大ヒット、株式公開の大成功を経験するくだりは『プロジェクトX』のよう。当事者から9回裏2アウト逆転サヨナラ満塁ホームランのドラマを聞いている感じで、読んでいて楽しく素直に心を動かされた。
著者のピクサー社に対する想い、縁の下の力持ち役の社員への思いも素晴らしい。ピクサーの映画に親しみがあったり、ジョブズに少しでも興味がある人なら、楽しく興味深く読める本だと思う。

...to me Pixar had been like a child: sweet, innocent, playful, and full of wonder and potential.

私が好きなのは、著者とジョブズがわざわざおもちゃ屋に脚を運び、トイ・ストーリー関連の商品のタグをチェックするところ。ピクサーのロゴの大きさを確認してニンマリする二人の姿…ジョブズが故人となってしまった今、その場に居合わせたわけでもないのに、なぜか私まで懐かしい思い出のように感じてしまう。
それにしても、パート4以降が残念。著者がピクサーを離れてからのその後が書かれているけれど、それまでとガラリと内容が変わり過ぎて、なかなか感情移入したり共感したりが難しかった。最後の最後でジョブズの死にも触れているけれど、とってつけたよう。パート3ですっきり終わってしまった方が良かった。でも、パート4こそが著者の一番書きたかったことなのだろうというのも理解できる。
とにかく、パート1から3までがおすすめです。

余談ですが…『トイ・ストーリー4』は、やっぱり思った通り、「あーあ、3でやめとけばよかったのに〜」でした。アメリカのネットでの評判は悪くなかったんですけど、私はかなりがっかりでした。もちろんその辺の平均的な映画よりは高水準の映画だとは思ったけれど、前作までのマジックが無くなっちゃった感じ。 映画館で他の観客の方々が爆笑してるシーンも、なんか笑いとり方がくどいなーと一人しらけたし、バズもあんなに頭悪い間抜けじゃないし、ウッディのエンディングでの決断も前作までと矛盾してるような…。 このモヤモヤは私だけ? ちょっと孤独…いつものことですが。