THE X-CHAPTERS / Xチャプター

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世界にはまだこんなにも謎がある! 祝書籍化!『オカルト・クロニクル』(松閣オルタ)

 本のタイトルと内容が合っていない!「オカルト」ってあるけれど、オカルトじゃないでしょと首をかしげたくなるような事例も多く載っている。表紙の右上のコピー「奇妙な事件 奇妙な出来事 奇妙な人物」が内容を表しているかと。それに「クロニクル(年代史)」になっていないし。でも、それでいいです、おもしろいから。

オカルト・クロニクル

オカルト・クロニクル

  • 作者:松閣オルタ
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2018/08/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 私がここ数年更新を楽しみに定期的に読みに行っている数少ないウェブサイト、通称(?)”オカクロ”の書籍化です。労力と時間をかけて執筆・運営されているサイトなのは明らかだったので、こんなのがタダで読めるなんてインターネットって素晴らしいなあと思ってはいたけれど、こちらがそう感じるくらいの質の高いサイトはやっぱり周囲に放っておかれず書籍になるんですね。元になったサイトはこちら↓
okakuro.org
 これ系の書籍やサイトは山のようにあると思うのですが、オカクロさんのどこにオリジナリティがあるのか、なぜ繰り返しサイトを訪れようと思ってしまうのかと言うと、扱う事例に対する真摯な姿勢、執筆者のお人柄がにじみ出る独特な文章、そして意外と見過ごされがちですがサイトに漂う美的なセンスだと思う。
 
 まず、とにかく「安易に否定しない、安易に信じない」を徹底していて、膨大な資料を読み解き、関係者に話を聞いたり、現地を訪れたり、こちらの「知りたい」という欲を代わりに突きつめてくれているのがすごい。そして、その結果を個性あふれる文章と、手がかかった図・写真で見せてくれる。本は分厚く上下二段にびっしり文章があるので、たくさんのオカルトチックな事件を軽くさわりだけ読みたいという人には向かない本ではあります。でも、勤勉かつ楽しい人柄の調査員のレポートを読んでいるみたいにすいすい読めます。ちょっと自分も調査員になったような気分も味わえたり。
 扱う事例が犠牲者が出た出来事だったり、どこかおどろおどろしい雰囲気をまとっているので、不気味な雰囲気になるのを避けたいのか、あるいは著者さんが深刻な雰囲気になると照れ隠しのようにふざけてしまう人なのか、まじめに読んでいるとところどころで不意打ちの”はずし”があるのが好きです。毎回、がくっとなりつつ「フッ」と笑ってしまう。「ハハハ」ではなく「フッ」です。 

 取り上げられているのは、15事例、ディアトロフ峠とかフィラデルフィア実験みたいな有名なのから井の頭公園バラバラ殺人事件とか比較的最近の事件まである。本家のウェブサイトでは、著者が興味を感じ調査や執筆に値するものをランダムに選んでいる感じで、書籍化のためにそこから人気にある記事を選んでいるようなので、熱心なオカルトファンに納得の行くチョイスではないかもしれない。 書籍に掲載されている記事は、当たり前とは言え記事はサイトとほとんど同じです。私のようにウェブサイトのほうをほとんど全部読んでいる読者には、購入の価値があるのか微妙ですが、ここは作者への感謝とお祝いの意味を込めて購入しました。サイトに載っておらず、書籍だけに掲載されているのは例の「この男の人わるい人」のメモ(何度見てもなんかゾッとする!)で有名な殺人事件と赤城神社の主婦の失踪事件だけ。欲を言えば、もっと新しい内容が欲しかった。私がウェブサイトで個人的におもしろいと思った記事(シカゴで世界最長の物語を一生をかけて書いていた男性の話、プマプンク遺跡、コーラル・キャッスル)も全部書籍化から漏れているし。 しかも、私の好きな、おそらく記事ごとに自作していると思われる記事のイメージ画像(アイキャッチ画像って言うんですか?でも大きさがあるからアイキャッチではない?)が、書籍内であまり活かされていない。 あれが、サイトの雰囲気を作っていると思うし、毎回観るのを楽しみにしているんですけどね。なんのソフト使って作っているんだろう? 書籍は、絵的にはサイトの良さに勝てていないと思いました。
 
 今回読み返していて、読書家の皆さんが「おお!」となる記述が『科学が襲ってくる――フィラデルフィア実験の狂気』にあったので、ちょっと触れておきますね。その章の最後のほうに、「ある3人の有名なSF作家が、フィラデルフィア実験が行われていた時期に同じ海軍のグループで、しかもフィラデルフィアで一緒に仕事していた」という事実が記載されています。ネタバレになるので、その3人が誰かはここには書きません。が、私は、かなり驚いて、フィラデルフィア実験の通説よりそっちの話のほうが「ガセでしょ、それはさすがに!!」と苦笑してしまったのですが、なんとその3人が軍で一緒にいる写真が・・・ほんとだったんだ!! もう、フィラデルフィア実験の真実より、そっちの偶然のほうが不気味というか素敵と言うか、とにかくびっくりしました。筒井康隆と星新一と小松左京とかじゃないですよ、あの人たちだったらあんまり驚かないんですけど。仲良さそうだから。 アメリカ人SF作家というだけで、接点無さそうな人たちだったので、運命や偶然の不思議さに感激しました。

 著者の松閣オルタさん、書籍化されてからウェブサイトがほとんど更新されていないんですけど、本が好評で執筆依頼がたくさんなのかな? 応援している人が日の目を見て嬉しいような、寂しいような・・・? これからもお体と身の安全にお気をつけて、執筆を続けていただきたいと思います。