THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

人生相談本シリーズその5 悩みから悟り、挫折から学び、逆境から人生を切り開く ニューヨーク心理学『Q&ADV. from New York Vol.1~3』『マイナス感情こそ手放すな! ニューヨーク流人生攻略法』(秋山 曜子)

 「ああ、またきつい1週間が始まる。起きたくないなあ・・・でも『Catch of the week』読みたいし、ベッドから出てコーヒー淹れるか・・・」
 私の月曜日の朝は毎週こんなふうに始まります。秋山曜子さんのコラム「Catch of the week」を読むことが、すっかり月曜日の習慣になってしまった。月曜更新なんですよね。いつからかもう覚えていないけれど、日本にいる時から読んでいたので、少なく見積もっても14~15年くらいかな。何事も長続きしない私は、改めてこれほど長い間に渡って質の高いアメリカの「今」を伝える情報を発信し続けて下さっていることに感謝と尊敬の念を感じずにはいられません。
 今回紹介する本は、そのコラムの著者によるネット上のお悩み相談が本になったものです。
ISBN:978-4863112070:detail
 秋山曜子さんは、オンライン・セレクトショップのウェブサイト『CUBE NY』の代表。ショップのほうは、貧乏人の私は鼻から相手にされてないような商品のラインナップで、コラムだけ読み逃げして何も買わないことをいつも心苦しく思っていたけれど、この本でやっとお金を落とすことができました。この本の内容の元になったのは、サイトのコーナーの一つである『Q&ADV』なのですが、当初はニューヨーク生活が長い秋山さんがその経験を活かして、「パーティーに呼ばれたけど何を持っていけばいいか」とか「このオケージョンでどういう服装でいくべきか」とか、ウェブサイト利用者からのアメリカ生活の質問に答えるという趣旨だったように記憶しています。アメリカ生活になかなかなじめなかった私にはかなり勉強になる内容ですごくよかったのに、いつしか恋愛相談やら読売のナントカ小町みたいな海外生活に全然関係無い悩みが取り上げられるように。でも、秋山さんの回答がかなり丁寧で読み応えあって、いろんな人が自分の悩みも聞いてほしいとなるのもまあ納得。最初は、ちょっとちょっとそういうコーナーだったっけ、と苦々しく思っていた私も毎週月曜更新のコラムだけじゃなくてこちらのコーナーも相談内容のいかんを問わず更新を心待ちにするようになってしまいました。
 秋山さんはニューヨークで起業してそのビジネスを10年も20年も続けて、独身で、努力家で勉強家で、このお悩み相談の回答なんて「セントラル・パークをランニングしながら集中して考えをまとめている」そうで、決して「もやしのひげとりをしながら回答を考えている」とかではありえないところが、なんか訳も無く腹が立つのですが、上から目線や偉そうなところや気取ったとこが無く、謙虚で聡明でやさしい人柄に好感を持たずにはいられません。もはや私には存在自体がファンタジーで、私がこれまでもこれからも送ることが無い人生を歩み続けている方なわけですが、その回答には「別世界感」は無いです。女性による、女性のための相談が多いですが、私が北方謙三先生の男性向け人生相談が面白かったように、男性も女性を知るには面白い相談集だと思います。途中から、男性からの相談もちょくちょく載るようになっていくんですよね。
 そして、『オカルト・クロニクル』と同じ流れですよ。やはり良いコンテンツは周りがほおっておきません。あれよあれよという間に、『Q&ADV』はウェブサイトで一番人気のコーナーとなり、「セレクトショップなのにお悩みコーナーが一番人気でいいのか」と思っていたら、なんと有料のプライベート・お悩み相談セッションが始まり、これまでの溜まったウェブ上のコンテンツは電子書籍で発売、電子書籍の売り上げ好評で紙版が出版・・・素晴らしい! さすが起業家、「これまでサイトで買い物をして下さったお客様にお礼の意味も込めて役に立つことはできないだろうか」という気持ちで始めたというコーナーまでもがお金を産む展開になっている。この流れにしびれました。正直ここ数年は、CUBE NYを訪れるたびに「今はアマゾンとかでアメリカのものも簡単に手に入るし、こんなセレクトショップってやっていけるんだろうか」と余計なお世話な気持ちを感じることもあったのですが、こんなふうに新しいビジネスが始まることもあるのか、と。
 そして、こんな著者の生き方が、相談の回答とリンクしているんですよね。このコーナーの数ある相談の中で、「くすぶる人生に転機をもたらすには?」という数年経っても記憶しているものがあり、それを今回読み返してみて、秋山さんがご自分のアドバイス通りに生きていて(小さなことでもいいから誰かを幸せにすることを毎日一つでもやってみる)実際それで人生の転機(新しいビジネスのチャンス)を迎えた生き証人であるのだと気付きました。この相談は、秋山さんご自身にとっても、反響があまりにも大きく忘れられない相談になったとのことですが、紙版の書籍でも電子書籍でも一番最後に収録されています。やはり数ある相談の中で、白眉と言えると思うので、これだけでも是非多くの方に読んでほしい。 (今もサイト上には全文が掲載されていて読めるのですが、リンクを張ると書籍販売の営業妨害になってしまいそうなのでやめときます・・・)
 この「くすぶる人生に転機をもたらすには?」という相談をしたFさんは、私が勝手に名付けた「コレジャナイ・ココジャナイ病」にかかっていると思われる方で、この方の長い相談を読んでいて「これは・・・私か!? 私の魂が幽体離脱して日本で実体を得て、なんの役にも立たない留学をして、どの仕事も続かなくて、ついには派遣の仕事も行き詰まって、貯金も無く彼氏もいなくて、38歳になってどうしようどうしようとあせりまくってるのか!?」と冷や汗が出ました。カッコの多い冗長な文章。これではいけないとわかっているのにどうにもできない性格。’そもそもどうしていいのかわからないからどうにもできない。Fさんの相談の最後の「本気で、どうにかしたいと思っています。よろしくお願い致します。(どんな厳しい意見でも構いません。)」という所を読んで、涙目になってしまいました。
 この相談をされた秋山さんは、Fさんに対して、上野千鶴子さんのように「困りましたね、アラフォーでこんなに”夢見る夢子ちゃん”状態では。今の生活がイヤだからリセットしたいだけ、としか聞こえません」(『身の下相談にお答えします』244ページ、41歳女性「私が送りたかった人生なのか」というお悩みに対する第一文)とバッサリ言うこともできたはずです。というか、Fさんの悩みを読んだ「まっとうな人たち」の9割は上野千鶴子さんとそっくり同じことを思うでしょう。それが世間です。世間一般です。多くの人がFさんのような人を「なにやってんの」と見下すのでしょうね。でも、秋山さんの回答は、私が予想するどれとも違っていました。 やや具体性に欠くかなと思う所と、占いうんぬんのところを除けば、これ以上親身になって相談を受け止め、心を込めて回答を書ける人がいるんだろうかという内容になっています。こんなふうに答えられる人になってみたいものです。
 このFさんの相談を始め、9つの相談がコーヒー代くらいで読める電子版Vol.3だけでも、お時間のある方は是非。男性からの相談も二つ載っていますし。Vol.1とVol.2ももちろん面白いのですが、後に行くにしたがって面白くなっていく印象があります。

 Vol.1は、急いで電子化したのか、誤字脱字が数か所あるのが残念。家族や親類からタダでヘアカットをしてくれと気安く頼まれるのをどうにかしたいという美容師さんのお悩み(「プロフェッショナル・ペイン」)、失恋から立ち直れないという古今東西繰り返されるお悩み(「突然別れを宣告されたショックから立ち直れません」)が面白かった。 Vol.2は、誤字も無く安定の面白さですが、「”若い”とほめるのは年寄り扱いと同じ?」と「進路の迷い・・・どちらを選ぶか?」の回答が特に勉強になりました。 紙版のほうは、Vol.1~3がすべて掲載してあります。
ISBN:978-4863112070:detail
 現在も、2週間に一度木曜日にコーナーが更新されていて、最近はお子さんを亡くした方からの重い悩みまで寄せられるようになってきています。これまでたくさんのことを学んだこの『Q AND ADV』、これからも読み続けようと思います。