日本の人生相談史(?)に燦然と輝く、中島らもさんによる朝日新聞の連載『中島らもの明るい悩み相談室』。特選集として『その1 ニッポンの家庭篇』『その2 ニッポンの常識篇 』『その3 ニッポンの未来篇 』が集英社から文庫で出ています。
らもさんの急死からもう15年も経つということで、この名・人生相談を知っている人もだんだん減っていきそうですが、私は今でも誰かに「笑える楽しい本を教えて」と言われたら、らもさんのこの人生相談とか『ナンシー関の記憶スケッチアカデミー』とか薦めます。どちらももう古典ですね。
ISBN:978-4087474756:detail
あまりに面白いお悩みばかりが掲載されているということで、「プロのライターが書いた悩みにらもさんが回答しているのでは」というやらせ疑惑が絶えなかったようですが、朝日新聞とらもさんは否定しているそうです。
でも、今回『その1 ニッポンの家庭篇』を読み返してみたのですが、これは・・・いわゆる「ネタ」というヤツですよね? 「衣服は束縛だと言って帰宅するなり全裸になる夫」、「月と飛行機が衝突しないか、パイロットは月がまぶしくないのかと心配する妻」、「ままごと遊びのたびに”もう別れましょうよ”と言う園児」、「謎の言葉”かたつむり”を残して電車を降りた父子」・・・こんなおもしろい人たちが世の中にはほんとにいるんでしょうか!? 朝日新聞側は、「仕込み」をしていなかったとしても読者側がネタを考えて送るのは自由なので、多分寄せられた悩みのうちの何割かは、らもさんを笑わせたり困らせたりしたい、読者が考えたネタなんじゃないかなあと思います。そう、らもさんと読者の面白さ比べの真剣勝負なのです。
とにかく笑える悩み相談なのは確かですが、ふざけ過ぎなわけではなく、らもさんのやさしさや懐の大きさも感じられます。「オカマごっこが癖になって子供にあきれられている」という相談の回答の最後がちょっと印象的でした。
傷つきやすい人たちなのです。おちょくるのはやめましょう。
(122ページより)
北方謙三先生も、「試みの地平線」の「ボクはホモです、このままでいいか?」という悩みに関する回答の中で同じようなこと書いてますね。
彼らはきわめて感性が鋭いのだ。普通の人間よりはるかに感性が豊かなのだ。
(『試みの地平線 伝説復活編』43ページより)
ホモフォビアが根強い国に住んでいるので、両氏の言葉に心が温かくなりました。
とにかく読後感の良い元気の出る一冊です。『その2 ニッポンの常識篇』『その3 ニッポンの未来篇』のほうも楽しみ。らもさん、いつも楽しませてくれてありがとう!! 生き返って新しい小説書いて!!