THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

ほんとにもう日本でブラックフライデーとかやめよう『Kira-Kira(日本語版題名:きらきら)』(by Cynthia Kadohata)

 今日からサンクス・ギビング・デー休暇。明日木曜のサンクス・ギビング・デー当日には小売店はほぼ全店休業となるから、牛乳とか卵とか切らさないように買っておかなくちゃいけない。感謝祭明けの金曜になってから買えることは買えるけど、金曜はできればいかなる実店舗にも近づきたくない。だって、ブラックフライデーだから!! うようよと車と人がいるんです・・・。
 ブラックフライデーは、アメリカではどんどん因習と化して来ている感じがします。過熱化し過ぎてしまった。お笑い番組でもよくちゃかされている。「大変!国境に移民が押しかけています!その映像です!」とか言って、ブラックフライデーのセールに開店直後から店になだれ込むアメリカ人の群衆の姿を映して笑いものにしたり。
 この映像は、お笑い番組じゃなくて真面目なニュースのものなんだけど、もはやコメディー? 鍋をめぐって店内でけんか、って・・・。ヴィクトリアズ・シークレットが似合わない人たちがその服奪い合ってるし。
www.youtube.com
 ブラックフライデーは、なんか人間の醜さ丸出しの日になってしまった。最近は、サイバーマンデー(ブラックフライデーで買いそびれたものを月曜日にオンラインで買う)のほうが売り上げが上、ということで実店舗に夜中から行列に並んでほしいものを買うというブラック・フライデーはもう時代遅れになりつつあるようです。
 でも・・・それでも、日本はブラックフライデーを日本でやりたいの?
なんで、そんなとこまでアメリカの真似しちゃうの? 百歩譲ってアマゾンはまあいい。親会社がアメリカだし、アメリカのアマゾン(に限らず米国内の小売りはどこも)は、すごいエネルギーでブラックフライデーに賭けてるわけだから、そのプラットフォームなり画面なりを日本でも使いたくなるかもしれない。しかし、この記事によると仕掛け人はイオンというじゃないですか!
diamond.jp
 いくら11月にセールをやる理由がないからって、なんでブラックフライデーをやろうという発想になるのかわからない。ブラックフライデーは11月の最後だし。11月全体の売り上げあげる効果無いと思うんですけど。 中国の「独身の日」を輸入したほうがマシじゃない? アメリカは真似してもいいけど、中国の真似はかっこわるいってこと? 11月に「独身の日」と「いい夫婦の日」が両方あるんだから、その二つをなんとか盛り上げるんじゃダメ? 
 クリスマス、バレンタイン、ハロウィン、最近ではイースター、そしてはついにはブラックフライデーまで。みんなも本当はうんざりしているんじゃないですか? クリスマスがなぜか男女が盛り上がる日だったり、バレンタインがもはや因習と化していたり、ハロウィンに意味無いバカ騒ぎ見せられたり、クリスチャンでもないのにイースターやったりすることに。
 もうねー、「アメリカのライフスタイルに憧れる」みたいなのは、お父さん・お母さん世代で終わっているんです! 私が渡米する時、仲がよかった友人に「遊びに来てね」と言ったら、「うーん、○○ちゃんには会いたいけど、アメリカってあんまり興味無いんだよね、フランスだったら行きたいけど」という返事が返ってきて、それもそうだなと。それなのに、イオンとかは安易にブランクフライデーとかに飛びついている。消費をしかける側と消費者の気持ちがずれてる感じがします。消費者をバカにしてるのか? 結局「金」なの? 儲かればなんでもいいのかなあ。消費者としても、安くなりゃなんでもいいのか。(でもね、結構あんまり安くなかったりもするから気を付けて下さい。安くした、と見せかけてるだけで)
 それになんでも真似してると、冷ややかな目を向けられそうじゃないですか。
自分のあとを金魚のフンみたいにくっついて回って、自分のファッションとかライフスタイルとか真似しまくる友達がいるのを想像してみるとわかるはず。 自分というものが無いのか、自分で何も考えられないのか、と哀れになると思います。アリアナ・グランデちゃんが変な日本語タトゥーを入れた時は厳しかったのに、自分はいいのかー!
 日本はすごい国なんだぞ! アメリカの真似などしなくていい。いいところだけ真似ればいい。ブラックフライデーがその「いいところ」とは私にはどうしても思えません。

 前置きが長くなりました。今回読んだ日系アメリカ人作家シンシア・カドハタさんの『Kira Kira』は、遠くアメリカで日本人が日本人として生きることの難しさが描かれている物語です。 アメリカの児童文学賞の最高峰、ニューベリー賞2005年の受賞作品。
ISBN:978-0689856402:detail
 ニューベリーの大賞をとるというのは本当にすごい快挙です。受賞作品は、この先もずっと必ず全米の図書館に置かれるでしょう。 歴代受賞者の中に日系作家のシンシア・カドハタさんの名があり、日本人少女と日本人家族の物語で受賞したというのが嬉しい。受賞からに既に10年以上経っていますが、これからも残っていくことでしょう。
 しかし、シリアスですよ~。超がつくシリアスなストーリーです。Amazonによるとターゲット・リーダーは10-14歳。しかし、いくら主人公が10歳~13歳の少女だからと言って、こんなの読む子いるんだろうか。芦田愛菜ちゃんなら読むのか? ほとんど大人が読んでたりして。差別、貧困、別離、喪失・・・少女による淡々とした明るめの口調で語られ、さわやかな読後になるように〆られていますが、扱われているテーマが重い、重い。10歳かそこらで「この本が好きだ」と言って繰り返し読んでいる子がいたら、ちょっと心配なような一目置くような複雑な心境になると思います。日本にあまり無いタイプの児童文学だと感じました。移民文学? 
 日本の言葉や文化の紹介も随所にあります。主人公家族は、今の日本に住む日本人よりも、強く日本人であろうとし、日本の文化を大切に生活しているように感じました。この家族が、日本でブラックフライデーやろうとしていることを知ったら、私と一緒になって怒ってくれることでしょう!
 作者のカドハタさんは、日系三世、つまり、自分も両親もアメリカ生まれアメリカ育ち。両親の親つまりカドハタさんの祖父母が、日本からアメリカに移民した人たち、いわゆる移民一世です。移民三世でだいたい祖先の出身国の文化の影響が消えて、家族のルーツの言葉もわからなくなり、アメリカの文化に染まるととよく言われますよね。カドハタさんはそんな移民三世であるわけですが、こんな日本愛溢れる小説を出しているわけですから、自身のルーツへの誇りと尊敬の念に打たれます。ご両親との関係がよかったんでしょうかね。自分のルーツにどれだけプライドを持つかは、親と関係にかかっているように思います。
 
 私は今アメリカに暮らしていて、英語力の無さでバカにされていると感じることはよくありますが、「日本人だから」という理由で嫌な思いをしたことはありません。日本が敬意に値する「一等国」になった、ということだと思いますが、そう遠くない過去に日本人家族の扱いがここまで低かったのかと思うと少しショックではありました。「私たちは下層の中の底辺だった」、というような表現がありますが、確かに今のアメリカでも移民の間であっても、民族間・人種間で社会的な地位をマウントし合ってる感はあります。あの人たちと一緒にされたくないよねー、みたいに他の移民や難民をバカにしてる日本人も知ってます。人間は、本当に愚かですね。優劣をつけずにはいられない生物なのでしょう。
 物語の中で、主人公の少女の家庭は貧しく、父親はひよこ鑑定の仕事、母親は鶏肉の加工工場の労働者として寝る間も惜しんで働いています。ちなみにひよこの雌雄鑑定の技術は、日本で確立されたそうです。さすが日本! 母親は来る日も来る日も工場で鶏肉をさばき続けているわけですが、これは今でも移民に割り当てられがちな、アメリカ人に人気の無い仕事です。語学力要らないし。結局誰もやりたがらないけど誰かがやらなくちゃ社会が回らない、給料の低い単純労働が移民に行くのです。
 「Kira Kira」と言う言葉は、主人公の姉のお気に入りの日本語で、主人公少女に繰り返し教えてやった言葉です。どんな過酷な現実を生きるとしても、美しいものはどこかに必ずある、それを見て生きて行こう、という姉のはかない願いが込められているかのよう。その姉を巡るドラマが妹を通して語られ、妹も大きく成長してゆく。終盤は、涙、涙です。
 日本語版も出ているようですが、これを日本語で読むのはちょっと微妙な気が。おにぎりとか梅干しとか、そういう日本語が丁寧に説明されているわけですから、日本人は、「それ知ってるから!」とイライラするかも。
 そして、「kira-kira : glittering」のところは、一体どうやって翻訳するのか。「きらきら=きらきら」になっちゃうの?
ISBN:978-4560047958:detail
 あと、英語のネイティブスピーカーでも無いのに、タイトルにもなっている重要ワードに色々言うのは本当に本当に生意気だと思うんですけど、「きらきら」は「Glittering」じゃない気が・・・。私には、ちょっとしっくり来ません。Glitteringだと「ぎらぎら」感がある。特に、主人公の姉はよく「きらきら」という言葉で、空や星など自然の美しさを表現していたので。「Shining」か「Sparkling」のほうがきらきら感出るんじゃないかなあ。での「Shining」じゃジャック・ニコルソンが怖い顔してタイプライター打ってるとこが思い浮かぶし・・・Sparklingだともっとはじけるような感じなのか? 英語はよくわからん! でも、日本語ネイティブスピーカーとして「きらきら」の「かすかながら一瞬美しい感じ」だけわかるので、それを表現できないのがもどかしい。 英語、日本語両方に堪能な方にどう思うか聞いてみたいところです。