
The Five Wishes of Mr. Murray McBride (English Edition)
- 作者:Joe Siple
- 出版社/メーカー: Black Rose Writing
- 発売日: 2018/05/17
- メディア: Kindle版
みなさーん、ティッシュの用意はいいですかー? いやー、よくこんなクサい話を書けるものです。
私は読んでいて、あまりのお涙ちょうだい設定に唖然としました。 私の中では、クサい小説と言えば重松清なのですが、彼でも恥ずかしくてここまではできないでしょう。夢だったホームランをメジャーリーグの球場で打ってベースを一周する少年・・・その体が突然崩れ落ちた!「ジェイソーーーーーーン!!」と絶叫して駆け寄る少女・・・・・・お約束過ぎて小説に集中できません。ああ恥ずかし恥ずかし!!
そして、アメリカ人の皆さん! レビュー数はそれほど多くないけど、どうしてみんなこんなに五つ星!? こういうクサいのが好きなの?

なんだろう? 小説にリアリティを求めるのは、バカバカしいことだとはわかっていますが、これはあんまりじゃないかと。ディストピア小説でいくら現実とかけ離れた世界を読まされても頭に来ない私ですが、このジャンルは厳しくなってしまう。おいおい、難病はエンターテイメントじゃないんだよ!と。この小説に出てくる少年みたいに移植を待つだけの心臓病を持つ身内がいる人は、多分10ページくらいで読むのやめてしまうことでしょう。
というより、最初の数ページでストーリーが全部わかってしまう。死ぬのはこの少年では無く、ヒロインのほうがと言うことが惜しげもなくネタバレされていて、あとはどうやってそうなるのか、というのが書かれているだけ。それも、予想通りで、もう・・・。
面白かったのは、100歳のおじいさんの生活や思い出話のところだけだなあ。クレジットカードを持っていなくて(アメリカは成人でクレジットカード使わない人は珍しい)、常に現金払い。この世から現金はどこに消えてしまったんだ?とか不思議に思ったり、10歳の少年とのジェネレーション・ギャップが大き過ぎて彼のメールの意味が分からず「英語で書いてくれ」と頼んだり。殿堂入りするような選手では無く平均的なシカゴ・カブズの大リーガーだったという設定ながら、昔の大リーグに思いを馳せてるところも興味深い。街で黒人を見かけて、「あいつの歩き方は野球選手だな。そういや私の時代は、ジャッキー(ジャッキー・ロビンソン)が来るまでは、黒人は二グロリーグでしかプレイできなかったなあ」とか思ったり。 作者は多分、カブズのファンだな。やたらカブズが良く書かれている。
あと、若い人たちが老人の運転の犠牲になった事故がクローズアップされた今年2019年の日本人にとっては、有効な運転免許も無く車を運転する主人公は許しがたいだろうなあと思いました。でも、ほんと、アメリカは運転できなくなったら一気に自由が無くなるんですよね。老人には切実な問題です。生活に必要なものとして、衣食住の次くらいに運転が来るんじゃないかなあ。確か、裁判で決まった子供の養育費払わない親に対するペナルティが、運転免許の更新をできないようにすることだと聞いたことがあります。 運転したかったら養育費払えよ、ということ。払うしかない、仕事行けなくなっちゃうもん。
アメリカにおける車の運転の大切さもさることながら、教会の存在感もこの小説を読むとひしひしと感じました。宗教にはいろいろ問題があるという人もいるけれど、教会があることでこの老人みたいにコミュニティから孤立せずに済んでいる人もたくさんいる。教会は、アメリカのコミュニティを良くしていると思うのです。
なんだかこの小説に関して、色々と散々なことを書いてしまいましたが、一番一番頭に来るのは、こんなクサい話を読んでぽろぽろ泣いてしまう自分です・・・。すぐ泣いちゃうんですよね。
図書館の入り口のデコレーションが日本の門松みたいできれいだったので、載せときます。
