THE X-CHAPTERS / Xチャプター

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発達障害の人にとって、ある意味とても残酷な本『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』(栗原 類)

 モデル、タレント、俳優の栗原類さんがADD(注意欠陥障害)という発達障害がありながら、どうやって今の自分になったかを振り返っている、2016年出版の回顧録。

 私は、自分はADHD(注意欠陥多動性障害)だと思っています。「思っている」だけで、診断や治療を受けていないのは、ADHDの得意技「先延ばし」をしているだけ。とにかく嫌な事、不快なことは全力で先延ばしです。散らかってるとイライラするので部屋の掃除や物の整理整頓はちゃんとやりますが、人生全体に計画性が無く行き当たりばったりで、リスクと刺激を好み、衝動的で、単調な日々が死ぬほど苦痛です。注意散漫で、小さな頃から怪我も多かった。授業なんて退屈でほとんどちゃんと聞いていなかった。それでも成績は良かったので、先生にはすごく嫌われていたと思います。うっかりミスが多くどんくさいので、保護者(親ではない人に育てられていました)にも叱られたりののしられたり「あんたは変わっている」ばかり言われていました。
 年齢と共に良くなってきてはいますが、今も「忘れ物やケガや間違いを避け、時間に遅れないようにする、時間内に物事を段取り良くすます」という大人なら誰でもできる当たり前のことのために、人には想像できないくらい大きなエネルギーを使っています。昔から、自分は人と何かが違うなフツウの人じゃないな、とは思っていましたが、恐ろしいことに三年くらい前まで自分はバリバリのADHDだと言う自覚も無く、身内の自閉症に関していろいろ勉強している時に雷に打たれたように「そうか、私は発達障害だったのか!」と気付きました。点と点が一瞬で繋がって大きな絵になったような、一気に今までの人生の謎が色々と腑に落ちた、まさにエポック・メイキングな瞬間でした。
 そんな私が、この本の著者栗原類さんのように、幼少時にきちんと診断を受け告知を受けていたらどうなっていたのか? そのほうがよかったのか? それは私にもわかりません。私は、自分の発達障害に対して自覚を持つようになってから、とにかく「自分の障害をよく知ってフツウの人に近づく」ためにこういう本を積極的に読んだりすごく努力するようになり、実際効果もあったと思うのですが、その代わり自分と言う人間にすごく自信が無くなりました。自分には、どうやっても変えることのできない生まれつきの大きな欠陥がある。発達障害をそのようにとらえてしまい、以前のように楽しく大胆な決断をしたり、堂々と人と接することができなくなってしまいました。なぜか、特に日本人に対してそうなりますね。こっちの人たちに関しては気になりません。理由はうまく説明できませんが、いろんな人がいっぱいいる国だし、それほどの深いコミュニケーションを取らずに済んでいるからかもしれません。
 栗原類さんがご自身の居場所を見つけられた理由は、この本を読めばよくわかりますが、ある意味発達障害の当事者にとても残酷な現実を突きつけていると思います。「輝ける場所をみつけられた理由」が「幼少時に素晴らしい親に恵まれた事」だからです。その素晴らしい親が本人を否定することなく適切なやり方できちんと幼少時に発達障害を告知し、素晴らしい専門医を選び、発達障害のサポートに関する先進国アメリカという環境を与えている。
 親って、今現在自分の発達障害をなんとかしたいと思っている人にとって、一番どうにも選びようがないものじゃないですか。それに類さんのお母様が選んだアメリカという環境も、一般家庭には選択肢としてあまりにも現実離れしていて、参考にならないと思います。英語力があったから自信を失わずに頑張れたとのことですが、日本にいてネイティブスピーカー並みの英語力を身につけるのは難しいことですし、書籍の帯には「誰もが輝くためのヒントが見つかる」とありますが、当事者にとってはあまりヒントは見つからない本だと思います。
 それに、栗原類さんが当事者としてご自身の人生を振り返っているのは、本の約半分だけなんです。下記の画像で、お母様のお写真が載っているページから後ろは、類さんのお母様と類さんの主治医の方の手記です。

 自分の発達障害の克服のために参考にしようと思って読むのではなく、一人の青年が歩んだ道のりを読み物として興味深く読むという意味では面白い本だと思います。彼はこうだったんだな、というふうに。そして、今現在発達障害のお子さんを育てていらっしゃる親御さんにとっては、「やはり親が大事なのだ」という重い責任を再確認する本になると思います。
 社会的に大きな成功を収めているADHDやADDの人はたくさんいますが、共通しているのは、成長過程で必ず本人を認め素晴らしい人間だと信じさせてくれる大人がそばにいたということだと思います。親じゃなくても、スポーツのコーチだったり、先生だったり、主治医だったり、本人のそばに本人の特性をわかった上で良い方に導いてくれる人がいることが不可欠です。それは、普通の子供でも同じだと思いますが、発達障害の子にはよりずっとずっと大切な事のように思います。私も含め、既に大人になった発達障害の方々がそこを選び直して生き直すことはできないわけですから、自分を受け入れ肯定する生き方は自分で探していくしかありません。この本から見つけるのは難しいかもしれませんが、きっと何かやり方があると信じています。
 そして栗原類さんは、この本を出された時にまだ20代前半。まだまだみんながいたわり、やさしくしてくれる時期です。大変なのはこれからだと思います。本当に輝ける場所を見つけたかどうか、何年も後にまたご自身の言葉で語ってほしいです。本からは、とてもやさしく人間味あふれる方のように感じました。これからも輝いてほしいと心から思います。映画などで、お姿を拝見する日を楽しみにしています。応援しています。

発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由

発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由

  • 作者:栗原 類
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/10/06
  • メディア: 単行本