THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

日本のお父さんお母さんたち、もうプレゼントを子供の枕元に置かなくていいんだよ?『さむがりやのサンタ』『サンタクロースっているんですか?』『The Polar Express』

今週のお題「クリスマス」
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 アメリカで暮らすようになってから、やはりアメリカにおける「クリスマス」という行事の存在のデカさ、金のかかり方、そして日本との祝い方の違いに少なからずショックを受けました。
 恋人同士がラブラブするというのが論外なのはもちろんのこと、イチゴの乗ったあのホールケーキとか、ケンタッキーフライドチキンとか、ブーツに入ったお菓子とか、私にとっての「クリスマス」がアメリカには存在しない。
 「寝ている子供の枕元にサンタさんからのプレゼントを置く」という習慣もそうです。私が子供の頃はそれが当たり前だったのですが、日本では今でも同じでしょうか? あれって日本だけだったんですね。
 ヨーロッパ諸国はわかりませんが、アメリカだと、小さいギフトは暖炉のそばにつるした靴下(「ストッキング」と呼ぶ)に入れたり、クリスマスツリーの下に両親とか祖父母、親戚縁者からのギフトとサンタさんからのプレゼントも一緒に置いておくのが一般的だと思います。ただし、サンタさんからのプレゼントだけ、包装紙や袋を豪華にして筆跡を変えたギフトタグをつけるとか工夫して、なんとなく「他とは違う感」を出すみたいですね。

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ツリー下のギフト 誰から誰へのギフトかを示すタグをつける
Image by Steen Møller Laursen from Pixabay

 よく考えると、寝ている子供の部屋に入って行って枕元にそっとプレゼントを置くってすごく危険な行為じゃないですか!? 足元ならまだしも、枕元は子供が起きちゃう可能性が大きいじゃないですか。私は、そういう時に限って落ちているレゴを踏んでうめき声を上げたり、躓いて子供の上に倒れたりとか、そういうマンガのような人間です。怖くてとてもできません。
 日本の親御さんたちはなんでこんなハイリスクを冒すのか。ちょっと検索して調べた所、その理由が切なかった。昔は日本もこんなに豊かじゃなくて、ツリーを買って飾れる家が少なかったから・・・だそうです。クリスマスの朝に目覚めた瞬間に子供を喜ばせてあげたい、という親心から根付いた習慣のようですね。
 しかしそれが理由なら、もう今の豊かな日本でそんな危険な(?)方法はとらんでもいいのではないかと思うのです。かと言って、アメリカの方法を真似しろと言っているわけではありませんよ。各自、創造性を駆使して、ここはオリジナルな渡し方を考えてみるのも楽しいかと。
 ちなみに我が家は、サンタさんからのプレゼントは子供の枕元にもツリーの下にも置きません。
 最初は、「イブに子供たちがツリーのそばにサンタさん用のミルクと手作りクッキーを置いて寝る」→「子供が眠ったら、親の私がツリーの下にサンタさんのプレゼントを置く、クッキーはどんなにお腹いっぱいでも親が頑張って食べる」というアメリカの定番をそのままやってました。
 しかし、ある年に私のお気に入り絵本(というか半分マンガ?)『さむがりやのサンタ』を子供たちに与えたところ、彼らが不安がるようになったのです。
「この絵本でもほかの本でもサンタは煙突を降りてくる、でもうちには煙突なんて無いし、このへんはほかのうちだって煙突無いからサンタさんが入れない」と、子供は真剣に困惑。
 そこで私は、まじめな顔をして言いました。「ねえ、今年からサンタさんに来てもらうのやめようと思うの。うちは煙突が無いから、実は去年までそこの一番大きな窓を10センチくらい開けておいてたんだけど、家の中が寒くなるし、知らない人がうちの中に入ってくるなんて、やっぱりお母さんは気持ち悪いし怖いしすごくイヤ!! 靴も汚そう!!」。子供たちの抗議は、すさまじく、「もうサンタに手紙を書いたのにどうするんだ」だの、「お母さんひどい」だのと責められ続け、交渉の結果、窓の鍵だけ一か所開けておくことに。
 その年は、彼らは不安がりながらも例年通りクッキーやらココアやらをツリーのそばに置いてサンタを迎えようとしていました。そして翌日。クリスマスの朝起きて来た子供たちは、例年と違ってクッキーには手もつけられておらず、ツリーの下にサンタさんからのプレゼントが置かれていないことに気が付き、当然落胆します。私は「お父さんお母さんが一生懸命選んだプレゼントがこんなにあるんだから、いいじゃない?」と明るく言いました。「でもやっぱりサンタさんに来て欲しかったな」としょんぼりする子供たち。かわいそうだけど、ここはぐっと我慢します。どうせ20分かそこらで子供たちは窓の外を見て「あれ?あそこになんかある!!」となるわけですから。
 そう、我が家は、サンタさんからのプレゼントは、がっちり水が入らない袋か箱に入れて、庭に放り投げておきます。庭が無い方はベランダでもいいでしょう。これが一番現代の住宅事情(煙突など無い)、セキュリティ事情に矛盾しません。雪が降った朝などは、足跡を残さないように、お父さんは全力で袋を砲丸投げの要領で庭の遠くに放り投げましょう。そして「そりの上から落としたのかなあ」などとクリスマスの朝に子供たちに言っておけばいい。私は、夢の無い憎たらしいお母さん役なので、「UPS(クロネコとか佐川急便みたいな会社)がドローンとか使って置いてったんじゃないの、まあもらえてよかったんじゃない」などと素知らぬ顔で冷たく言ってますが。 
 そして、この年以降は、「サンタさんへのもてなしクッキーは缶に入れ、ペットボトル飲料と一緒に外に置く」「サンタさんからのプレゼントは家の外のどこかを探す」、というのが我が家の子供たちの伝統になりました。我が家にはサンタは入って来ない、ということで一応子供は納得しているようです。
 トイレでも、こたつでも、屋根の上でも、木につるすんでもいいし、とにかくそのおうちで新しい伝統を作って、お子さんをびっくりさせてみて下さいね。なかなか楽しいですよ。 

 しかし、ここまで書いておきながらこんなことを言うのもおかしな話ですが、ここまでして、子供にサンタの存在を信じさせるべきなのか? よく考えるとくだらないなと私も心のどこかで思います。クリスマスは、「Season of Giving」で与えることの素晴らしさ「Giving spirit」を噛みしめる日じゃなかったの? 
 知人のティーンネイジャーのお子さんが親御さんに「サンタは信じてる人には来るんだよね? 私は信じてるからね」とニンマリ笑いながら高いスニーカーをおねだりしているのを見て、かわいいなと思うと同時に少しもやもやとしました。もう・・・「Season of Getting」? 何かが・・・何かが違う!! 資本主義の餌食になっている!!
 この違和感を知人女性とのふとした会話の中で打ち明けたところ、帰宅後、彼女がメールで「あなたとの会話で、昔、母からもらった手紙を読みたくなって出してきた。私は自分の子供がサンタの存在に疑問を持つようになったら、この手紙をそのまま使うつもり。あなたもよかったらお子さんに話してあげて」と、お母様からのお手紙をタイプしたものを送ってくれたことがあります。
 これがもう素晴らしいんですよ。私は、子供に「サンタはほんとにいるの?」と聞かれたら、『サンタクロースっているんでしょうか?』でも渡すか、と思っていましたが、このメールのほうが出版に値するのではないかと思いました。
 本当に拙い訳ですが、日本語訳と原文を載せますね。こんなふうに答えられる人になりたいです。
 しかし、絵本『The Polar Express』のラストのように、子供の頃しか聞こえない美しい鈴の音、それを聞いていてほしいという気持ちもあります。とにかく、クリスマスは、毎年毎年、ものすごく心が揺れて、どうしようかなあと思っているうちに終わってしまう・・・そんな感じです。

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 「ママとパパがサンタなの?」

 すごくいい質問をしてくれましたね。お父さんとお母さんが本当はサンタなのか、あなたが答えを知りたがっているのがわかる。なんて言ったらいいかよく考えなくちゃね。
 答えはノー。お父さんとお母さんはサンタではありません。この人がサンタだ、という誰かが一人いるわけじゃないの。お父さんとお母さんは、あなたの靴下に贈り物を詰めたり、プレゼントを選んで包装してツリーの下に置いたりする人。私の親が私に、彼らの親が彼らにした通りに、そしていつかあなたがあなたの子供にするのと同じようにね。
 でも、だからと言って私たちがサンタだということには決してならないの。サンタっていうのは、クリスマスの心を生かし続けようとしているたくさんのたくさんの人たちみんなのこと。サンタは、私たちの心に住んでいるの。北極じゃなくてね。サンタは、魔法と愛とそして誰かに何かを与えようとする心。サンタがしているのは、子供たちに見ることも触れることもできない何かを信じるように教えることなの。あなたは、一生を通してこの「信じる」という力が必要になるでしょう。あなた自身を信じ、家族を信じ、友を信じ、神を信じるということが。あなたは、その手で測ることもつかむこともできないものを信じられるようにならなくてはいけないの。
 これでもうあなたは、サンタさんがどうやってクリスマスイブにああいう煙突を全部降りるのか(そして窓を通り抜けるのか)っていう秘密がわかったでしょう。サンタさんに心を喜びでいっぱいにしてもらった人たちが、サンタさんを手伝っているの。
 その満たされた心があるから、ママやパパのような人たちがサンタさんのお仕事を手伝う番になりました。手伝わなかったらできそうもない仕事をね。だから、そう、お父さんとお母さんがサンタというわけではありません。サンタは、愛と魔法と希望と幸せのこと。お父さんとお母さんはサンタさんのチームだし、もうあなたも同じ。あなたはその希望と魔法を小さな妹と弟のために生かし続けてあげてね。

 あなたを愛してる、これからもずっと。

 愛を込めて、お母さんとお父さんより

(以下、原文)

ARE MOMMY AND DADDY SANTA?

You asked a really good question, "Are Mom and Dad really Santa?" We know that you want to know the answer, and we had to give it careful thought to know just what to say.

The answer is no. We are not Santa. There is no one, single Santa. We are the people who fill your stocking and choose and wrap the presents under the tree - just as our parents did for us, their parents did for them, and you will do for your kids someday.

This could never make any of us Santa, though. Santa is lots and lots of people who keep the spirit of Christmas alive. He lives in our hearts - not at the North Pole. Santa is the magic and love and spirit of giving to others. What he does is teach children to believe in something they can't see or touch. Throughout your life you will need this ability to believe: in yourself, in your family, in your friends, and in God. You'll need to be able to believe in things you can't measure or hold in your hands.

Now you know the secret of how he gets down all those chimneys [and through the windows!] on Christmas Eve. He has help from all of the people whose hearts he has filled with joy.

With full hearts, people like Mommy and Daddy take our turns helping Santa do a job that would otherwise be impossible. So no, we are not Santa. Santa is love and magic and hope and happiness. We are on his team, and now you are too. You can help keep that hope and magic alive for your little sister and brother.

We love you, and we always will.

Love,
Mom and Dad
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文中に出てきた本たち

『さむがりやのサンタ』
『スノーマン』『風が吹くとき』などの名作で知られるイギリス人作家レイモンド・ブリッグズによるコミックのような絵本です。

さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ)

さむがりやのサンタ (世界傑作絵本シリーズ)

 主人公のサンタさんがかなり偏屈でクリスマスの仕事もあまりやる気が無いんだけど、一人暮らしを楽しんでいて、なんだかその暮らしぶりが素敵です。
 本の中で、サンタがプレゼントを配っている時、どこの家でもクッキーとミルクばかり出されてうんざりしていて、「サンタさんご自由にどうぞ」をいうメッセージが書かれたお酒に大喜びして一服しているという場面があります。今日、またその本を出した来た我が家の子供が、「今年はせんべいとビール置いてみる?サンタさんは男の子だからその方が喜ぶ?」と言ってました。うーん・・・私は嬉しいですが・・・。とにかく、大人も子供も想像力を刺激される楽しい一冊なので、是非手にとってみて下さい。

『サンタクロースっているんでしょうか?』

サンタクロースっているんでしょうか?

サンタクロースっているんでしょうか?

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2000/11/27
  • メディア: 単行本
 タイトル通りの質問を送ってきた子供に記者が答えた有名な社説が、小さな本になっています。絵本ではありません。難しい言葉を使っているわけではありませんが、内容はよく読むと難しい。小学校中学年~高学年が批判精神を持ちながら読むとおもしろいかもしれません。「誰も見た事がないということが、それが存在しないということの証明にはならない」というようなちょっと詭弁も入ってます。

『The Polar Express』

The Polar Express big book

The Polar Express big book

  • 作者:Chris Van Allsburg
  • 出版社/メーカー: HMH Books for Young Readers
  • 発売日: 2014/10/28
  • メディア: ハードカバー
 アメリカの絵本作家クリス・ヴァン・オールズバーグによる30年前発表の作品。1986年のコルデコット賞(アメリカの絵本に与えられる最高栄誉の賞)受賞。2004年にはロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス出演で映画化。ちなみに『ジュマンジ』も同じ作家の作品。
 絵本でなければ意味がない美しい絵、大人が読むと少し切ないラストの余韻がいい。しかし、まだ何も失ったことが無い子供にはよくわからないかも?
 日本語版は、村上春樹さんが翻訳。こんなお仕事もされているとは。
急行「北極号」

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