THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

アメリカの小説家/元出版エージェントによる小説の書き方ガイド『How to Write a Novel』(by Nathan Bransford) 第一回

 一月も気が付けばもうすぐ半ば。あちらこちらのブログで皆さんの実にいろんな新年の抱負を見かけました。しかしどれも意外なほどまともで、「鼻からうどんを食べてギネスに載ります」とかぶっとんだものは皆無。世間の皆さんの良識に安堵すると同時に、「匿名ブログなんだから、もっとここでしか言えない秘められた抱負とか書く人はいないわけ?」と思ったりもしました。
 というわけで私の抱負を書きます。
 いわゆる「普通の」抱負は割愛して、ずばり書いてしまうと、今年中に小説を書こうと思っています。どんなつまらないものでもいいから、短編小説を最低二作。
 だいぶ前、アメリカに来る前に、友達と映画を撮ろうとしていた時期があったのですが、その体験を通して映画を観る目、芸術や娯楽に対する考え方ががらりと変わりました。何かを創る、創ろうとすることは、大恋愛とか海外移住とか子供を産むとかと同じくらい自分を変えてしまうことなのではないかと感じました。ここ数年、人生を変えるようなすごい経験をしていないので、ここは創作という新しいことに取り組んでみたいと思います。小説なら、映画と違って一人でできるし。(映画もやりようによっては一人でできますが)
 このブログでは人の創作をこき下ろしまくっている私ですが、創作を通してきっと謙虚さ、さらなる本への愛が生まれてくるものと思います。昨年、このブログが自分の読書習慣を後押ししてくれたので、ここで抱負を宣言することで、後に引けなくなって頑張れることを自分に期待しています。

 前置きが長くなりましたが、そんなわけで、今月は創作に関する本を何冊か取り上げようと思います。才能ある人はこの手の本を一冊も読まなくても、すーらすら書けるんでしょうけど、意外と超売れっ子作家さんでもちゃんと市民向けの創作講座に通った方もいますし、どこから手をつけていいのかわからないので、こういう本も読んでいこうと思います。もし、このエントリを読まれた方で、創作に関するおもしろい本をご存知の方いらっしゃいましたら、コメント欄などで教えて下さい。

 今回、取り上げる本はこの本です。

How to Write a Novel: 49 Rules for Writing a Stupendously Awesome Novel That You Will Love Forever

How to Write a Novel: 49 Rules for Writing a Stupendously Awesome Novel That You Will Love Forever

  • 作者:Nathan Bransford
  • 出版社/メーカー: Nathan Bransford
  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: ペーパーバック
『How to Write a Novel: 49 Rules for Writing a Stupendously Awesome Novel That You Will Love Forever』って・・・サブタイトル、長いよ! 英語のノンフィクション本の「あるある」ですな。直訳すると、『小説の書き方:ずっと愛せる最高の小説を書くための49のルール』といったところでしょうか。タイトル通り、小説を書く前の段階から、実際に書いている作業、推敲、完成までの過程を49のアドバイスで追っている本です。
 著者のNathan Bransfordは、出版業界でエージェントとして8年間のキャリアがあり、その後、ご自身も子供向けの小説を3作発表した作家。しかし多分、自作の小説よりこの小説教本が一番売れていると思います。ご本人は複雑な心境でしょう。
 本書は、明記はされていないものの、長編小説執筆を想定している感じです。また、アメリカと日本では本の出版のプロセスがかなり違うので、そのあたりに明るくない私にはわからないところも多くありました。しかし、創作に関する一般的な心構えは日米共通の部分がほとんどだと思います。
 
 今回のエントリから3回連続で、この本を3つに分け、印象深かったところを書いていこうと思います。今回は、実際に執筆に入るまでの段階に関するところまでです。
 
 「何に関して書くのか」、そのアイディア選びが大切なのは言うまでもないですが、著者が繰り返し主張しているのが、「流行を追うな」ということ。流行っているジャンルやテーマは、流行っている段階で追い始めたらもう手遅れだ、と断言しています。多分エージェントとして、『トワイライト』の後は山のようなヴァンパイア物、『ハリー・ポッター』の後は山のような魔法学校物を読んでうんざりしたというような経験があるのでしょう。
 じゃあ、何を書くのか? それは教えてくれません。それは日常生活の中で自分に問い続けるしかないとのこと。「これは小説になるか?」、いつもいつもそれを考えるしかないと。
 著者も認めていますが、小説執筆において「こうしろ」と言うのはすごく難しいけれど、「これはダメだ」というのは簡単に教えられるそうです。そんなものですよね。その一つが「流行を追うこと」なのだそうで。
 
 アイディアを見つけることに関するアドバイスのあとは、基礎になるジャンル設定の大切さ(読者はジャンルを気にしている)、執筆スタイルの話(計画派、即興派)の話などがあり、そして、一番ページが割かれているのは、プロットの大切さについてです。

プロット=Premise (最初の設定)+Complication (複雑要因、困難な問題)
 
例)ハリー・ポッター:やや気性の激しい(※原文では”mildly acerbic”とあるが適切な訳がわからない)少年が自分が魔法使いだということを知る(Premise)、しかし誰だかわからない恐ろしい人物が彼をアバダケダブラしたがっている!(Complication)

 純文学であれ、回顧録であれ、プロットは作らないといけない、と著者は説きます。良いプロットの5要素など、とにかくプロット作成に関してかなり詳細に説明されています。ここで、すべて書いてしまうと著作権問題になりそうなので、書けないのが残念です。

When you’re starting a novel, don’t just think of a theme or a premise and leave it at that. The complications and obstacles are everything.
小説を書き始める時、テーマと初期設定を考えるだけじゃいけない。複雑要因や障害がすべてなんだ。

 つまり、Complicationが無いとプロットにならない、そこがプロットの肝ということかと。これは、小説じゃなくて脚本を書こうとしている人にとっても大切なことではないでしょうか。

 今回は、簡単にルール1~ルール12までの要点のみ紹介しましたが、次回は実際の執筆過程のアドバイス部分に関してご紹介したいと思います。
 
 最後に、ここまでで著者が説明に使った実際の小説や映画を以下に列挙。なんの説明も無く名前が出てくるので、アメリカではだいたい本好きが「ああ、あれね」とわかるレベルの著名な本たちということなのだと思います。ブックガイド的に参考にしていただければ幸いです。ちなみに私は読んでいない本もありました。またまた読みたい本が増えてしまった。どうしてくれる!


『A Game Of Thrones (七王国の玉座)』(ジョージ・R・R・マーティン) 
ジャンル慣例を破った珍しい好例だそうです。いろんなところで引用されていました。

七王国の騎士 (ハヤカワ文庫SF)

七王国の騎士 (ハヤカワ文庫SF)

『トワイライト』(ステファニー・メイヤー)

トワイライト 上 (ヴィレッジブックス)

トワイライト 上 (ヴィレッジブックス)

『ハリー・ポッター』シリーズ(J.K.ローリング)

ハリー・ポッターと賢者の石<新装版>

ハリー・ポッターと賢者の石<新装版>

  • 作者:J.K.ローリング
  • 出版社/メーカー: 静山社
  • 発売日: 2019/11/26
  • メディア: 単行本

『プライドと偏見』(ジェイン・オースティン)

自負と偏見 (新潮文庫)

自負と偏見 (新潮文庫)

『ジェイン・エア』(シャーロット・ブロンテ)

ジェイン・エア(上) (岩波文庫)

ジェイン・エア(上) (岩波文庫)

『指輪物語』(J.R.R. トールキン)

文庫 新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫)

文庫 新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫)

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(E L ジェイムズ)

映画『スター・ウォーズ』
シリーズのどれのことを言及しているのかいまいちよく分からず。

『ザ・ロード』(コーマック・マッカーシー)

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)

ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)

『ギレアド』(マリリン・ロビンソン)

ギレアド

ギレアド

『ユゴーの不思議な発明』(ブライアン セルズニック)

ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)

ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)