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アメリカの小説家/元出版エージェントによる小説の書き方ガイド『How to Write a Novel』(by Nathan Bransford) 第三回

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『How to Write a Novel』の電子版より
 前回に続き、小説の書き方ガイド『How to Write a Novel』に関するエントリ第三回目です。
How to Write a Novel: 49 Rules for Writing a Stupendously Awesome Novel That You Will Love Forever

How to Write a Novel: 49 Rules for Writing a Stupendously Awesome Novel That You Will Love Forever

  • 作者:Nathan Bransford
  • 出版社/メーカー: Nathan Bransford
  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: ペーパーバック
 やっと読了しましたが、今回読んだ部分には、主に行き詰まった時の対処法と出来上がった小説に直しを入れる方法、成功に対する考え方が書かれていました。

 本を書くのは楽しいのは最初だけで、後に行くにしたがってきつくなってくるものだという著者。最後に差しかかった時の心境はこう↓

You are at the point in the marathon where you can’t feel your legs, and the only thing keeping you going is your momentum and the fact that the finish line is so close. (Or so I’ve heard. I would never do something as insane as running twenty-six miles.)
あなたは、マラソンで自分の脚があることすら感じられなくなり、ゴールが近いという事実と体の勢いだけで走ってる地点にいるんだ。(そうなるって聞いたことがあるだけで、42キロも走るなんて狂ったことは僕は絶対やらないけど。)

 私、小説書いたことないんですが、著者の言葉に「そうでしょう、そうでしょう」と深くうなずきましたよ。だって、この本も後に行くにしたがってしんどそうな感じなんですもの。 この本は小説じゃなくて、ノンフィクションに入るハウ・ツー本なんですが、まあ、作者の魂から出た言葉が本一冊分入ってるわけじゃないですか。最後のほうは、続けたりまとめるのが大変なのは同じなんだなあと感じました。
 書けなくなった時の対処法とかは、普通の自己啓発本と同じ感じ。特に奇抜なやり方は書いてありません。
 そのひとつが、「わかってます」なアドバイスですが、「運動の大切さを過少評価するな」ということ。脳は体の一部。心拍数をあげて血液を循環させると、あら不思議、クリエイティブなアイディアが出てくるよ、とのことです。はいはい。

Momentum, once lost, is difficult to regain. It’s just like exercise. If you haven’t worked out for a few weeks, the first time back is going to be painful.
執筆の勢いは、一旦無くすと取り戻すのが難しい。運動と同じ。何週間か運動しないと、もう一回始める時がすごく苦しいでしょう?

 上記は、なんらかの事情で執筆を中断してしまったときの話です。
 戻る時は、やはり久しぶりに運動する時と同じように、軽い仕事から徐々にやっていけ、と。ブログを書くんでもいいし、短文とか手紙とかエッセイでもいい。徐々に徐々に自分を元の状態に持っていくこと。まあ、当たり前ですね。ここら辺はブログを中断してしまった方にも役立ちそうな励ましがいっぱいありました。

 あとは、直しの難しさが何ページにも渡って書かれています。自分で直すのも編集者とか出版エージェントに直される場合も、とにかく何をどこまで修正するか、どれだけ人の意見を聞いたらいいか、その難しさが未経験の私にもひしひしと伝わりました。
 第一稿を読み返すと、そのひどさにすぐ修正に着手したくなるけれど、それをやると雪だるま式に直すところが次々増えていくだけだそうです。とにかく慎重に。3回読んで、直したいところをすべて書き出して、どこから手をつけるか検討したうえで、修正にとりかかること。

Think of it as a pre-surgical checkup. You need to assess the patient very thoroughly before you begin open-heart surgery. Do your triage before you operate.
手術前の検査と同じように考えて下さい。心臓切開の手術をする前に、患者さんを徹底的に精査しますね。手術前にトリアージ(重症度判定の検査)をやりましょう。

 通読して、とにかく、一作の小説が出来上がるまでの長い道のりにため息が出る本でした。大変さを知って圧倒されています。
 この本を読んだことで私が小説を書けるようになったか、それは微妙ですが、読んでよかったと心から思っています。既に小説の読み方が変わりました。この本を勉強している間に読んだ長編小説と短編小説集において、この本で紹介されていたルールがことごとく見事に守られていて、プロの書き手のすごさをより感じることができたからです。そして、そのすごさをルールにまとめたこの本の著者のすごさも感じました。

 最後に、小説でもブログでもなんでも、頑張って何かを書いているすべての方に、この本の著者が一番繰り返し使っていたフレーズを送ります。結局、これにつきるんでしょうね。本のタイトルをこれにすればよかったのに。

Keep writing!

 この本を取り上げた第一回はこちら↓
hyakunennokodoku.hatenablog.com
 小説の執筆過程のアドバイス部分を追った第二回はこちら↓
hyakunennokodoku.hatenablog.com
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 今回取り上げた部分では、第一回、第二回の部分と違って、言及される作家や作品名がほとんどありませんでした。唯一、「小説は脚本のようであってはならない、セリフばかりにしてはならない」というアドバイスの中で、「おそらく小説をセリフ中心にして成功している数少ない作家」として紹介されていたのが、エルモア・レナードです。小説の中の会話に関して、独特なアプローチをとっている稀有な作家とのこと。 エルモア・レナード・・・読んだことないんですよね・・・。タランティーノのお気に入りの犯罪小説作家、というくらいしか知らず。
 以下に、邦訳されている代表作を載せておきますので、興味のある方は是非。どれもすごくおもしろそう。どれから読もうかな。是非読んで感想を書いてみたいと思います。

『ゲット・ショーティ』(エルモア・レナード)
ギャングまがいの高利貸しチリ・パーマーが活躍するシリーズ第一作。ジョン・トラボルタ主演で昔映画化もされましたね。

ゲット・ショーティ (角川文庫)

ゲット・ショーティ (角川文庫)

『アウト・オブ・サイト』(エルモア・レナード )
銀行強盗と警察官の大人のラブ・ストーリー。フェロモンが絶好調に出まくっていた頃のジェニファー・ロペスとジョージ・クルーニーが主演している映画版を観たことがあります。二人のセクシーさにくらくらしたこと以外、何も覚えていません。これも、エルモア・レナードだったとは。

アウト・オブ・サイト (角川文庫)

アウト・オブ・サイト (角川文庫)

『ラム・パンチ』(エルモア・レナード )
タランティーノの『ジャッキー・ブラウン』の原作ですね。運び屋やってるスチュワーデスが男たちを手玉にとって大活躍、という痛快なストーリーだったような。

ラム・パンチ (角川文庫)

ラム・パンチ (角川文庫)