THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

「この商品は私の人生を変えました!」がお約束、アマゾンの面白レビュー集『Did You Read That Review?: A Compilation of Amazon's Funniest Reviews』(Amazon Reviewers)

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 ↑上記のどちらかをタイトルにした方がよかったんじゃないかと思う、米国アマゾンの面白レビュー集。レビュー集が本になり、そしてその本にまたレビューが付くという・・・もう何がなんだかわからない時代です。

Did You Read That Review?: A Compilation of Amazon's Funniest Reviews (English Edition)

Did You Read That Review?: A Compilation of Amazon's Funniest Reviews (English Edition)

  • 作者:Amazon Reviewers
  • 出版社/メーカー: Amazon Publishing
  • 発売日: 2014/11/18
  • メディア: Kindle版
 アマゾンでなぜかユーザーにターゲットにされてレビューが「祭り」状態になっている商品がある、というのは以前から聞いたことがありました。私でも知っているその二つが「バナナスライサー」と「狼の絵柄のTシャツ」なのですが、本書はやはりその二つから幕を明けます。
 そして、これでもかこれでもかという勢いで総数100商品以上に渡り2~3個ずつへんてこレビューが選ばれ掲載されています。
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アマゾンのレビュー欄がおかしくなっていることで有名な2商品
 例えば、前述のバナナスライサーですが、商品説明は至ってシンプルにこんな感じ。

Slice an entire banana with one quick motion. Kids love slicing their own bananas. Safer than a knife. Made from dishwasher-safe material.
バナナを丸ごと一動作でスライス。子供たちは自分のバナナをスライスするのが大好き。ナイフより安全。食洗器使用可能。

 このなんてことない600円くらいの商品に、誰かが以下のレビューをつけたことをきっかけに、みんな悪乗りして競って変なレビューや商品への質問が連投される事態に。

★★★★★
もうあんたは勝てないよ、バナナさん!
 何十年もの間、僕はバナナを切る究極の方法を考えようとしてきました。「ナイフ使えよ!」みんなそう言います。でも・・・僕の保護観察官がナイフを持つのを許してくれません。「銃で撃てよ!」、購入時の身辺調査が!! もう素手で手間かけてバナナをスライスするしかありません。その場合99.9%の確率で、いらいらしてバナナを握りつぶし、怒りで壁に叩きつけることになります。
 そんな時、バナナに激怒状態の僕に、保護観察官がこのキッチンの驚異の品を教えてくれて、僕の人生は変わりました。もう黄色い厚皮の果物への怒りと憎悪ではらわたが煮えくり返り疲れ果てることもありません。僕は、演劇への情熱に集中できるようになり、新しいミュージカルを書いてます。二人の愛し合う男女が、対立するギャング団からなんとか逃れて一緒になろうとする話です。『サウス・サイド・ストーリー』っていう名前にしようと思ってます。
 バナナスライサーよ、ありがとう・・・遥かな地平線が見えてきました。

 このレビュー集にはこの後に続いた3レビューくらいのみしか載っていませんが、アマゾンの商品のページでは「もうバナナをシーリング・ファンに投げなくてすみます!」とか「もうこれなしで生きられない!バナナ食べないんだけど」「あまりにも素晴らしくて一日中バナナを切っていて仕事をクビになりました!」等々、延々と続いています。まあ、アメリカン・ジョークと言えばそうなのですが、くっだらなーいとニヤニヤできます。皆さん、クリエイティブです。

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バナナの向きが反対でがっかりのご夫婦。Amazon.comの商品ページより
 そして、変なレビュー界(?)の有名人と言えば、我らがジョージ・タケイさんです! 以前から、なんでジョージ・タケイさんってネットでこんなに人気あるんだろうって思っていたけれど、多分このアマゾンレビューがきっかけですよね? この本でそれを知りました。この本のレビューで「ジョージ・タケイのやつだけおもしろい」と批評していた人がいて、まさか有名俳優のタケイさんが実名でレビュー書くわけないじゃないと思っていたら、あの「狼の絵柄のTシャツ」の祭りのきっかけはタケイさんのレビューだったことをこの本で知りました。他にも同じ会社から出ている猫の顔大写しのTシャツでも違うオチで書いてらっしゃいます。UFO検出器のレビューも物語仕立てで素晴らしい。なんという才能。コメディライターになれますね。みんなにUncle Takeiと好かれるのも当然です。George Takei won the Internet. (←〇〇はネットでうけた、みたいな感じでよく出てくる表現) タケイさんのレビューだけ拾い読みしてしまいました。
 ただし、タケイさんのレビューは、「日系アメリカ人俳優」「オリジナルのスタートレックに出ていた俳優」「ゲイで、ブラッドさんという男性のパートナーと長きに渡り幸せな結婚生活を送っている」というような背景知識が無いと面白さがわからないものが多かったです。あと、タケイさんはほぼpun(ダジャレ?)だけでレビューをいくつか書いており、「すごい!」「凄すぎる!」と絶賛が寄せられていましたが、日本語ネイティブスピーカーの私には何かすごいのかさっぱりわかりませんでした。デイブ・スペクターさんってすごいんだなと思いました。

 「狼の尿」とか「食用うさぎ」とか「2000万円の時計」とか、商品や価格自体がなんじゃそりゃと言いたくなるようなものにつけられたレビューより、特におもしろくもなんともない平凡な商品で盛り上がってるパターンのほうに、一般人の創造性とノリの良さを感じて楽しめました。
 人を怒らせたり泣かせたりより、くすっと笑わせるほうが何倍も難しい。私もそういう方向でもっとクリエイティブになりたいなあと思った罪の無いくだらなさがいっぱいの本でした。

 ただひとつ残念だったこと・・・それは、だいぶ前に見かけたすごいレビューが収録されていなかったことです。そのレビューが読みたくて、この本を買ったのに。
 このレビュー集を一冊読み通し、数百のレビューを読んでも、あれを越えるレビューはありません。内容が暴力的過ぎて削除されたんでしょうか。タイトルを覚えていませんが、オプラ・ウィンフリーの番組で紹介されてすごく流行った自己啓発本に対するレビューです。内容も文章もすごいレビューで、読み終わったあとなぜか軽い嫉妬を覚えました。ちっ、やられた、あんたすごいよ、みたいな。
 以下のような内容なんですけど、アマゾンで見かけた方いらっしゃいましたら、リンクを教えて下さい。記憶を元に書き起こしたので、細部はオリジナルと違いますが・・・

「この本は、僕の人生を変えました! 僕はあの頃アルコールの問題を抱えていました。人の家のポストに脱糞するという迷惑行為を繰り返したことで実刑判決を受け、刑務所に服役することになってしまいました。
 入所してまもなく、僕はある受刑者Aに呼び止められ、僕は刑務所たばこと刑務所ワインで刑務官から彼に売り飛ばされたと告げられました。受刑者Aは、新入りの僕を”かわいがって”やると言いました。僕は、人生でホモだったことはなく震えあがりました。
 悩む僕に同房の親切な受刑者が、この本に僕を助ける方法があるだろう、と言って一冊の本を貸してくれました。本など読む気分ではなかった。でも、藁にもすがる思いで読み進めました。最初の何章かを読んでも何も役に立つ情報はありませんでした。しかし、第〇章に進んだ時、それはあったのです!! 本の残りのページをくりぬいたところに、刑務所支給の歯ブラシを溶かして削って作る”刑務所ナイフ”が埋められていました。
 僕は次の休憩時間に、本を手に運動場に出て受刑者Aの首をそのナイフで刺しました。独房に入れられた僕は、やっと本をじっくりと読むことができました。この本は僕の人生を救ってくれました。皆さんにもおすすめします。」

hyakunennokodoku.hatenablog.com