THE X-CHAPTERS / Xチャプター

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ジョン・グリーン人気がよくわからない『Looking for Alaska (日本語題:アラスカを追いかけて)』(by John Green)

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未来を想像するのはノスタルジアのようなもの 現在から逃げるために未来を利用しているだけ

 ジョン・グリーン、アメリカですごい人気があるYA作家です。ジョン・グリーン信者がいっぱいいます。
 作家としても大成功していますが、ヴロガー(Vlogger、YouTuberとは少し違う気もするけど動画投稿する人)としても大成功。そっちのほうで信者を増やしたのかも? お勉強系コンテンツから、弟とコンビでやっている「私生活さらけ出します」系のやつまで、とにかくここまで動画投稿が流行る前の十数年前に始めて今も続けている、というのが人気の秘訣でしょうかね。
 彼の作家としての代表作は何と言っても『The Fault in Our Stars』です。現在(2020年2月)、米国アマゾンのオールタイム・レビュー数ランキングベスト4。日本語翻訳版は『さよならを待つふたりのために』というジョン・グリーンが死んでもつけないと思われる邦題がつけられています。映画化もされ、これで世界的な人気を誇る作家になりました。

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米国アマゾンのレビュー数ランキング

 今回読んだ『Looking for Alaska (アラスカを追いかけて)』は、そんなジョン・グリーンのデビュー作にして、彼を一躍有名にした作品。英語圏のYA文学に授与される最高峰の文学賞のひとつ、プリンツ賞を2006年に受賞しています。
 初刊は2005年なのですが、昨年2019年にHuluでドラマ化されるにあたり、作品へのよくある質問にジョン・グリーンが答えた回答集(結構な分量)を巻末に収録し、また新たに売り出されています。

Huluのドラマの予告編↓
www.youtube.com

 『The Fault in Our Stars』がすごくよかったし、小説の書き方講座本『How to Write a Novel』で「二人の人間の関係のアップダウンの書き方において、お手本のような小説」と絶賛されていたので、これは読まねばと思って手にとりました。読書SNSやアマゾンのレビューなどでも、非常に評価の高い一作です。

Looking for Alaska [並行輸入品]

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  • 作者:Green, John
  • 発売日: 2006/12/28
  • メディア: ペーパーバック
アラスカを追いかけて

アラスカを追いかけて

アラスカを追いかけて (STAMP BOOKS)

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 ・・・・・・そんなにいいですかね?

 この、みんなが素晴らしいといっているものがわからない寂しさ・・・。これって語学力の問題というより、「文学を理解する読解力が無い」ということなのではないかと思うんです・・・。あとは、YAを読むには歳をとり過ぎているとか?? 
 この小説は「YA小説」というジャンルに入れられていますが、ディストピアでサバイバルするとか、ヴァンパイアと狼男と三角関係で私困っちゃうわ、みたいなSFやファンタジーではなく、至って真面目な「文学寄りのYA」です。プリンツ賞受賞ですからね。真剣に「生とは死とは」「若さゆえの過ちと葛藤」などを主題に書かれています。こう書くと、読む気がしない、と感じる人も多いでしょう。
 ではそんなシリアスなテーマの割になぜここまで売れるのか? 私はズバリ、「ジョン・グリーンを読むのはクール」という雰囲気をうまいこと作ったからだと思います。文学と言っても、分厚い眼鏡かけた勉強ばかりやってる真面目ちゃんが読むやつとは違うぜ、という感じを出そうとしているんですよね。俺の小説の登場人物は、高校生だけど煙草も酒もやるし、セックスもするし、汚い言葉も使うんだ、でもいろんな詩や文学作品からの引用だらけの会話もできてカッコいいだろ、みたいな。ひねくれ過ぎですかね。
 私にはとてもそれが「現代の若者を表している」とは思えないのですが。あんなわざとらしい会話する高校生いるんでしょうか。
 ジョン・グリーンの小説は『The Fault in Our Stars(さよならを待つふたりのために)』『Paper Towns (ペーパータウン)』に続き読むのは3作目なのですが、この小説と『Paper Towns』はキツかった。
 この小説、私にはこんな感じに思えるのです。

 ださくて頭悪いやつばかりの普通の公立学校では、僕は友達もろくにいなかった。頭良すぎるんだよね。パパとママにお金出してもらって全寮制のエリート私立高に行くことにしたよ。ラブレーが言った「Great Perhaps(偉大なもしかして)」を探しに。
 奨学金で通っている貧乏人もいるにはいるけど、みんな頭もいいしクールな子ばかりの学校だ。そうしたら、突然家族みたいな友達が勝手にできたんだ!僕はなーんにも努力していないけど。
 しかも、人類史上最高にホットな女の子(the hottest girl in all human history)も勝手に紹介してもらえたよ。アラスカちゃんっていう名前で、小柄なんだけど素晴らしくカーヴィーな体で美人なんだ。彼女は部屋中が本でいっぱいなんだけど、「タバコをすったりセックスしたりブランコ乗ったり、やることいっぱいでなかなか読めない(There is so much to do: cigarettes to smoke, sex to have, swing to swing on)」とか言ったりする奔放で気分屋の子なんだ。 すごい酒豪だしね。僕はアラスカちゃんに翻弄されてうっとりだよ。彼女は頭も良くて愛読書はなんとガルシア・マルケスの「迷宮の将軍」だし、イェーツなんかも読んでいる。残念ながら彼氏がいるんだけどね。
 でも、彼女の傷ついた心を本当にわかってあげられる特別な男は、ぼ・く・だ・け・・・! 僕が、彼女の謎めいた本当の姿を探り当てるからね!

 「アラスカ」っていう名前を『ペーパータウン』のヒロイン「マーゴ」に変えてもいいくらいかぶってます。
 ワイルドでミステリアスな女の子におとなしい僕がなぜか選ばれて振り回される、これは文系男子の夢なんでしょうか。作者のファンタジーと作者自身のキャラが自己投影され過ぎてる感じで、ちょっと気持ち悪いです。「迷宮から出る方法を探してくれる?」とか、ほんとにそんなこと話す女の子いたらちょっと寒いんですけど・・・アラスカちゃんが美人だからこそ成り立つキャラです。そのキャラに至った理由は小説内で明かされますが、並以下の容姿の女子がアラスカちゃんのように心に傷を負ったとしてあんなふうには振舞わないでしょう。別の方法で苦しむように思います。

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『Looking for Alaska (アラスカを追いかけて)』で一番有名になったフレーズだそうです
 「共感できる、俺も私も若い頃こうだった」、みたいなレビューも多く見かけましたが、こんな容姿も良くあるいは並外れて頭いい特別な人たちに、皆さんよく自分を重ねて共感できますよね。私は1ミリも共感できませんでした。残念。 
 主人公がなんのお咎めも受けずに、「アラスカ!許してくれるよね? 僕は希望を胸に生きるよ~!!」みたいに爽やかに終わるラストも謎です。君は本当にアラスカの苦しみを理解したのか? すぐにさっぱりすべてを忘れそう。

 ジョン・グリーン・・・どうしてこんなに人気あるんだろう?? 良さを分かりたいよ。私はやっぱ頭悪すぎるのかなあ・・・合わないのかなあ・・・。

 あと、お父さんお母さん、お子さんとこの本を車の中でオーディオブックで聴く、とか絶対だめですよ。Blow jobのシーンで、気まずい沈黙が流れると思います・・・。

↓著者とドラマ化キャストの対談(アラスカ役の女優は、小説ちゃんと読んでないような気がする)
www.youtube.com
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英語メモ

shake on it 握手する、〔取引・交渉などで〕手を打つ
get laid セックスする
premonition 予感、兆候、予告、虫の知らせ