THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

M・アトウッド、サルマン・ラシュディなど著名文化人たちが「みんななんかコワいよ・・・言論の自由はどこ行った?」と公開状発表! J・K・ローリングは入れないほうよかったんじゃないの

 「性の多様性」うんぬんより、「言論の自由」に関しての問題にもなってきているJ・K・ローリングの炎上騒動には、前回触れました。

 が、またまた物議をかもす展開が!

 著名文化人150人の署名により、以下の公開状が雑誌ハーパーズ・マガジンに7月7日に発表されました。(個人的にはジャズ・トランぺッターのウィントン・マルサリスが入っているのが、他のメンバーとちょっと属するコミュニティが違う感じなので意外でした)

harpers.org

 いろいろ書かれていますが、要は「はっきり意見を言ったらネットで袋叩きにあう、社会的に村八分になる」という風潮やいわゆる「Cancel Culture」(発言者をクビにする、発言者の作品を撤去するなど)が幅を利かせていることに対して、

「正義は大事だけどやりすぎだろ!? 
自分と違う意見にも耳を傾けるべきだよ、
寛容さはどこ行ったんだよ。
自由に議論することの大切さを忘れたのか??」

と、訴えているような内容です。
 
 発起人のジャーナリストが、この公開状作成のきっかけになった出来事としていくつか挙げているのが、ブラック・ライブズ・マターの抗議運動の行き過ぎの結果です。

・詩人のための基金だか財団だかのトップが「マイノリティにあんまり金を使っていない」「抗議行動支持の声明文がお粗末」という理由で辞任に追い込まれた

・文芸批評家団体の理事がその団体のマイノリティ支持声明発表文の一部に「ここはちょっと違うくないか」と言っただけで「クビにしろ」署名が回った

・データアナリストDavid Shorが「暴徒が多かった抗議運動より平和な抗議活動のほうが、その後の選挙で抗議内容を反映した選挙結果になりやすい」というような学術論文を引用したツイートをしたら、Twitter上で解雇を求める運動が起こり、一週間後クビ。

 こうした動きに疑問を感じてこれは何かしなくちゃいけないと思って動いた、というのが背景のようです。これは、その発起人ジャーナリストがマイノリティ人種だからできたことですね。

f:id:AgentScully:20200709223602j:plain
発起人ジャーナリストのWikipediaのページより。モデルのようなプロフィール写真ですよね

 これを白人がやると、これまた「お前が言うな」の嵐なんだろうなと思います。

 この公開状、まっとうなことを言ってるし支持したいんですけど、ここ要りますかね?

The forces of illiberalism are gaining strength throughout the world and have a powerful ally in Donald Trump, who represents a real threat to democracy.
(半自由主義の力は世界中で強さを増し、民主主義の真の脅威を象徴するドナルド・トランプという強力な味方を得た。)

 
 この一文で公開状全体が台無しのような・・・言ってる事の正当性が・・・。絶対ツッコミ入ると思います。この一文が入っている出だしの段落要らない。第二、第三段落だけでいい。だから、いつも言ってるのに。発表する前に私に相談して、って。

 そして、この公開状、何が波紋を呼んでいるかって、J・K・ローリングが入ってる事です・・・。 
 発起人の彼は「憂慮を感じたきっかけのできごと」に彼女の炎上ケースは入れていませんでしたが、タイミング的に彼女をかばっているようにとられても仕方ない。

 J・K・ローリングご本人も大喜びで「公開状に署名したわ!誇りに思っている」とツイート。あんたがそうやってつぶやくたびに揉めるんだからそういうのやめな、って私があれだけ前回の長文ブログで書いたのに。どうして読んでくれないの?

f:id:AgentScully:20200709231510j:plain
だからそういうのがダメなんだって、そんなにツイート好きなの?

 Twitterに関しては、80歳のマーガレット・アトウッドのほうがよっぽどうまい距離感で楽しくやっているという・・・。JKRよ、偉くなり過ぎちゃって、誰も忠告してくれる人がいないの?

 署名した150人の文化人の中には大慌てで、「マーガレット・アトウッドやノーム・チョムスキーが入っているから署名したのに!  J・K・ローリングが入っていること知っていたらやめていた」と言う人も。公開状に入って後悔! 実際、名前を削除した方もいるそうで・・・。

 ネットの反応も、公開状に「何が書かれているか」より「誰が署名したか」のほうに関心が集まってしまっています。

公開状「キャンセル・カルチャーはもうやめよう!」

反応「うるせー!こいつらはキャンセルだな」

 なんか、こういうコントありませんでしたっけ?

 そんな方々には、ベストセラーノンフィクション作家のマルコム・グラッドウェルのツイートを送ります。

マルコム・グラッドウェルのツイート
公開状に名前を入れたことを後悔する人へのマルコム・グラッドウェルのツイート

I signed the Harpers letter because there were lots of people who also signed the Harpers letter whose views I disagreed with.
(ハーパーズ・マガジンの公開状に署名したのは、自分とは意見が合わない人たちもたくさん署名していたから。)

I thought that was the point of the Harpers letter.
(そういうことを公開状は言ってると思うんだけど。)


マルコム・グラッドウェルのツイートより

 ちなみに、このマルコム・グラッドウェルさんは、社会やコミュニケーションに関する割と分かりやすい感じのノンフィクションを多数発表している作家です。出す本出す本、腹が立つほど売れています。私は図書館で順番待ちなのですがかなり先まで回ってこなそうな感じ。でも今年中に是非読んで記事にしたいと思っています。日本語訳も出てますので、興味を持たれた方は是非。

Talking to Strangers: What We Should Know about the People We Don't Know

Talking to Strangers: What We Should Know about the People We Don't Know

英語メモ:
brainchild 独創的な考え、発明物、発案物
internet shaming ネットでの叩き行為
swift 敏速、即座
ostracism 追放、排斥、村八分

参考記事:
Artists and Writers Warn of an ‘Intolerant Climate.’ Reaction Is Swift.
How that Harper’s Letter Came to Be
Poetry Foundation Leadership Resigns After Black Lives Matter Statement
Penn prof. faces backlash after disagreeing with National Book Critics Circle BLM statement
Stop Firing the Innocent

blog.the-x-chapters.info
blog.the-x-chapters.info