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キング家長男ジョー・ヒル作、血ドバドバ涙ボロボロ目玉と首ゴロゴロのホラー+ダークファンタジー+青春マンガ『Locke & Key (日本語題:ロック&キー)Vol.1-6』(Story by Joe Hill, Illustrated by Gabriel Rodriguez)

 ジョー・ヒルが作話を担当し、漫画家ガブリエル・ロドリゲスと組んだコミック・シリーズ『Locke & Key (日本語題:ロック&キー)』の全6巻を読みました。
 ジョー・ヒルは、徐々に徐々に人気が出てきて「スティーブン・キングの息子」という前置きがされなくなってきましたね。

『Locke & Key (ロック&キー)』vol.1-6
『Locke & Key (ロック&キー)』vol.1-6

 初回「ラヴクラフトへようこそ」が2008年2月刊行で、全36話の最終話が2013年12月に刊行。完結まで5年以上を要する大河ドラマになっています。
 『Y: The Last Man』とか『The Walking Dead』と言ったほかのいわゆる「大人マンガ」のヒット作ほどの知名度は無かったものの、じわじわと人気が出て、2011年にはアイズナー賞(米マンガ界のアカデミー賞みたいな賞)のベストライター部門を受賞。

 そして今年2020年の2月にNetflixでドラマが始まって、ついにこの原作本もブレイク。図書館で長い順番待ちをして借りました。

 なんとびっくり日本語版もありました。原作の第一巻と第二巻を収録したものだそうです。一番盛り上がらないところで終わっている・・・。そのあとが面白いのに。
ロック&キー

ロック&キー

 ストーリーは、かなり複雑怪奇、奇想天外です。

 主人公は、Locke家の三人の子供たち。

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左から、キンジー15歳、ボーディ(5歳くらい?)、タイラー(17歳)のロック家の三人の子供

 高校教師の父親が目の前で教え子に惨殺され、自分たちも殺されかけるという恐怖体験をしたロック家は、その出来事から逃げるようにはるばる大陸を横断し、遠くマサチューセッツ州のラブクラフトという街の家族所有の屋敷、通称「Key House(キーハウス、鍵屋敷)」に移り住む。そして、不思議な鍵を巡る恐怖と冒険の日々が始まるのだった・・・。

 ざっくり書くとそういうストーリーですが、非常に登場人物が多く、人物の関係も複雑で、序盤は登場人物表が欲しくなると思います。非常に展開もゆっくり。
 が、後半、ストーリーが、父親の過去、父親よりももっと過去、とさかのぼるあたりから一気に盛り上がり、思い入れのある登場人物たちの運命が気になり読むのがやめられなくなります。
 
 はっきりとは書かれていませんがおそらく自閉症だと思われる少年、ルーファス君のエピソードも興味深かったです。シングルマザーのエリーとルーファス君がどうなるのかは、かなり多くの読者が心をつかまれるところだと思います。

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会話がすべて軍隊用語になってしまうルーファス君、二体のフィギュアとママが大好き

 うまく言えませんが、作者には、こういう二人を出してくれてありがとう、と言いたい気持ち。ほかにも、いろんな意味で「マイノリティ」に属する人たちが登場します。作話作家と作画作家、両方がきちんとそういう人達のことを勉強して作っている感じがしました。

 血と闇の描写は全篇通してすさまじいです。

 繊細な人はご飯食べられなくなるんじゃないかな。私は平気で食前食後にすらすら読んでいましたが。作画作家は赤と黒の絵の具を大量消費したことでしょう。たくさんの死が描かれますが、どれも子供の前では絶対読めないグロさ。しかし、その時点でその登場人物は既に知人のように感じているだけに、ただただグロいだけではなく、ものすごく「グロ悲しい」。勝手に作った言葉ですが。そして、凄惨なその死にざまのせいで、生前の登場人物たちの生が一層美しく感じられます。

 そして、涙の描写も多く、印象的です。恐怖、怒り、悲しみ、くやしさ、後悔・・・いろんな涙が流れます。みんな、実によく泣きます。読後はあまりの血と涙と死体の量にしばらく頭がぼんやりして元に戻すのが大変でした。

 難をつけるとすれば、登場する鍵の種類が多過ぎること、それぞれをうまく使いこなせていないこと、鍵の力の設定がむちゃくちゃ過ぎて分かりづらい(特に「Head Key」)ところでしょうか。

 鍵が起こす超常現象よりも、それを巡る人間ドラマのほうが面白かった。

 家族の物語であり、友情や恋の物語でもあり、若い主人公たちの成長の物語でもあり、喪失と再生の物語でもあります。非常に重厚で読み応えがあり、読み終わった後、最初からもう一度読んでみたいとさえ思いました。


 以下は、ドラマ版の予告編。
www.youtube.com

 予告を観た時点で、なんかもう「違う・・・これじゃない・・・」の嵐です・・・。古屋敷、井戸、洞窟、そういう「いかにもホラー」な設定が陳腐に見える。マンガのほうは、作画の方が芸術的に仕上げて陳腐にならないように頑張ってたんですね。
 ちなみに、一度の映画化プロジェクトの中止、二度のドラマ化失敗、と映像化まで紆余曲折を経てかなりの時間がかかっています。今回は、原作のグロ描写をほぼ省いてドラマ化成功。

 無事ドラマが放映された時のジョー・ヒルの興奮がほほえましかった。

「みんな、これから数週間は僕のつぶやきは『Locke & Key』のドラマのことだけになっちゃうと思うけど許してくれ!」
「アメリカ以外の国でも観られているんだろうか?どういう反応なんだろう?」
「今、アマゾンをチェックしたんだけど、原作のコミックが売り切れになっている!!」

 などなど、まるで素人さんのようにはしゃいでおられました。自身の作品が映像化されるのは初めてではないと思うんですけど。やっぱ嬉しいんですね。シーズン2放映も決まったようです。おめでとう!!
 
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英語メモ

buttoned-down 服装、やり方などが型にはまって保守的、古い I heard Lovecraft Academy is pretty buttoned-down. (ラヴクラフト校はすごく堅苦しいところと聞いた)

cornball 野暮ったいもの、田舎者、感傷的な人

overbearing 横柄な

senile もうろくした、ぼけた

(参考記事)
How Netflix Broke the LOCKE & KEY Curse - Nerdist
'Locke & Key': Inside the Beloved Comic's Decade-Long Path to Netflix | Hollywood Reporter
The Weather Network - Spooky Nova Scotia caves and cliffs featured on hit Netflix show
Where is Locke and Key filmed? Locations revealed for Netflix series - Radio Times

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