THE X-CHAPTERS / Xチャプター

米国から本の話題をお届け

俳優ロブ・ロウの自伝、スキャンダルのことはあまり語られていないけど、本人の朗読はさすが『Stories I Only Tell My Friends: An Autobiography』(by Rob Lowe)

 80年代の映画スター、そして近年は『West Wing(邦題:ザ・ホワイトハウス)』などのテレビドラマでしぶとく活躍中の俳優ロブ・ロウ。

  私の中では、「もてもてでちゃらちゃらしている顔だけの俳優で歳とって消えてった」という位置づけの俳優だったので、先日下記の記事を偶然読み、「こんな人だったっけ」と驚いてしまいました。
www.newsweekjapan.jp

 まあ、記事を読む限り、残酷な言い方ですが彼の場合は「終わりが分かっているから頑張れた介護」という部分もあり、高齢者介護にあたっている方には響かないかもしれません。それでも名も無い人々に暖かい励ましを送る文章は心を打たれるものがありました。

 一気にロブ・ロウを見直したところで、更にマルコム・グラッドウェル「作家が語る私のお気に入りのオーディオ・ブック特集」でロブ・ロウのこの自伝を挙げているんですよ。

Believe it or not, the best audiobook I have ever listened to was actor Rob Lowe’s autobiography, Stories I Only Tell My Friends (2011). For some reason, hearing his crazy life story read in his own soothing, familiar voice was riveting. I listened to it all in one go, on a long car ride to my mother’s house.

 まさかと思うかもしれないけど、今まで聴いた中で最高のオーディオブックは、俳優ロブ・ロウの自伝『Stories I Only Tell My Friends (2011年刊)』なんだ。いろんな理由で、彼のクレイジーな人生の話を彼自身の心地よい聞きなれた声で聴いて釘付けになったよ。母の家に向かう長いドライブの間、一気に聴いてしまった。
(From
Now you're talking! The best audiobooks, chosen by writers | Books | The Guardian
)


 ということで、私も聴いたり読んだりしてみました。

Stories I Only Tell My Friends

Stories I Only Tell My Friends

  • 作者:Lowe, Rob
  • 発売日: 2012/01/03
  • メディア: ペーパーバック

 この本、セレブの自伝としてはかなり売れたほうらしいのですが、読後色々調べてやっとその理由がわかりました。

 私は彼にそれほど興味が無かったせいで知らなかったのですが、ロブ・ロウと言えば、世間では「ロブ・ロウ=セレブ初のセッ〇ス・テープ流出の人」なんですね。パリス・ヒルトンとかキム・カダーシアンの先輩です。時代を先取りし過ぎたな、ロブ・ロウ。
 そのスキャンダルが当時では衝撃的過ぎて、華々しい80年代の人気が一気に低迷し、その後の完全に人気が回復することは無かったというのが世間の認識。本が売れた理由はそのスキャンダルのことを本人が語るという話題性の高さもあったのでしょう。
 あと、ロブ・ロウと言えば、もうひとつ、『大草原の小さな家』の天才子役、主役のローラを演じたメリッサ・ギルバートの彼だったというのも超有名な事実のようです。彼女が自伝のほうで「ロブ・ロウとの子供を流産した」というショッキングな暴露を先にしていたので、そのへんをロブ・ロウの側がどう語るのか、というのも世間の興味を引いたんだと思います。

 しかし結論から言うと・・・みんなが知りたいその二点はうまいこと飛ばされています。 

 「そしてその頃、あの事件が起こった。」

 という感じで、「まあ、詳しく言わなくてもみんな知ってるんだろ?」と言わんばかりにはしょっています。スキャンダルに関して知りたくて読んだ人は、「金返せ」になり、そして私のようにそれらを知らずに読んだ人にとっては、「ん?何々?なんで急にこんなオブラートにくるんだような話し方?」となるでしょう。ネットで検索して、やっと「ああ~そういうことか~」と腑に落ちる、そんなレベルにとどめられています。

 あと、本の四分の一くらいが、フランシス・コッポラ監督の83年の映画『アウトサイダー』のことです。オーディションから、撮影、完成後の試写などのことまで、ロブ・ロウにとって大切な体験だったことが伝わる読み応えのあるところです。

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  • 発売日: 2017/06/30
  • メディア: Blu-ray

 しかし・・・

 私、『アウトサイダー』観てないんですよ・・・。
 
 よく考えたら、『セント・エルモス・ファイアー』も・・・『昨日の夜は』も・・・。イケイケだったころのロブ・ロウの80年代映画、一つも観ていない・・・。

 もしかしたら、彼が出ている映画で観た事があるのって『オースティン・パワーズ』くらい? しかも、ロブ・ロウの役どころが思い出せない。ひどい。

 ロブ・ロウの出演作を観た上で読んでいたら、面白さが数倍増した本だと思います。観ておけばよかった、ともやもやしまくりました。あと、80年代の映画スターが総出演状態で出てくるので、知っている人にはたまらないと思います。

 でもこんなにロブ・ロウのことをよく知らず、出演作もほとんど観ていないにも関わらず、たしかに面白く読めた本ではありました。

 「演技が自分の天職(True Calling)だ」と早くから自覚したオハイオの田舎の少年だった70年代。
 カリフォルニアのマリブに越して、ショー・ビジネスの世界で成功の階段を駆け上がっていく80年代。
 キャリアの絶頂ですべてを失った後、「人生を作った」90年代。

 チャーリー・シーン&エミリオ・エステベス兄弟、ショーン&クリス・ペン兄弟といった二世俳優たちと、高校生の頃から本当の兄弟のように同じ夢を追いかけたところなどは、読んでいて本当に楽しいです。

 しかし、俳優業の苦しさ、虚しさ、名声に溺れ私生活や本来の自分を失っていく恐ろしさ、そういった負の部分に迫力を感じた本でした。

 映画で俳優が流す涙。私たちにとってはたった一度観るだけの場面です。そのたった一度のために実際は俳優は何十テイクも同じことをやっている。そのたびに魂を込めて演技し、もう何も残っていない心が空っぽの状態になっても、更に監督にやれと言われたらやらなくてはならない。そして、そうまでして撮った場面が完成後の映画では・・・。
 
 それに失敗作でも、他のスタッフのように「クレジットから名前をはずしてくれ」と言うこともできない。俳優はそういう逃げ方もできない。失敗の原因はたいてい俳優のせいにされてしまう。

 俳優ってある意味尊厳もへったくれもない、報われることが少ない仕事なのではないかと思わされます。

 アルコール依存&セックス依存→スキャンダル→リハビリ入り、という最近のセレブのある意味定番コースをたどったロブ・ロウですが、その後の人生は少し違うようです。
 キャリアは以前ほどぱっとしないものの、非常に堅実な家庭人として同じ女性(メイクアップアーティストのシェリルさん)と30年近く結婚生活を現在も続けています。これってハリウッド俳優としては珍しいしすごいこと。二人の息子さんも育て上げ、ご自身の複雑な生い立ちとは対照的な家庭生活を営んでおられます。

 本の終盤は、奥様や家族へのラブレターのよう。

If you had asked me when I was a young punk what would be the best thing that could ever come my way, I would have said "A Martin Scorsese movie!".
(もし若い頃、一番起こって欲しいことは何かと聞かれたら、私は「マーティン・スコセッシの映画!」と答えただろう。)

The god had other plans. He gave me Sheryl.
(神には別のプランがあった。神は私にシェリルをくれた。)

 
 夢はかなわなかったけど、幸せだ。
 幸せだけど、夢はかなわなかった。
 
 どちらととっていいのかわからない、少しほろ苦い気持ちが残る自伝でした。

 これからもし手にとる方は、是非、ロブ・ロウ本人が朗読してくれるオーディオ・ブック版を!
 俳優ロブ・ロウのすごさを思い知らされます。出てくる有名人たちの会話部分を全部その人の口調を真似て読んでくれるんですけど、すごい臨場感。特にトム・クルーズが笑えました。私、トム・クルーズとしゃべったことないんですけど、でも絶対あの口調なんだろうなっていう口調です。クリントン大統領とかも、「これいいの」っていうくらい真似されています。文字で読むより、楽しさ数倍。確かに運転しながら聴くのに最適な本でした。

英語メモ:

talk shop 所構わず商売の話をする
・Everybody avoids her because she'll talk shop when she meets you. : 彼女に会うと所構わず商売の話をするので、皆が避けている。

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