今週のお題「読書感想文」。
前回は、かなり実用的な読書感想文コピペ原案を記事にしました。今回は、アメリカ児童の読書感想文事情を全力捜査したので、報告します。
アメリカでは「感想文」ではなく「批評文」
日本の読書感想文は端的に言うと、
「ある本を読んで得られた感想や思索を自由に綴る文章」。
つまり日本の読書感想文は、「本をテーマとしたエッセイ」なのです。アメリカでは、「エッセイ」のジャンルに入れられてしまうと思います。
アメリカでもエッセイを授業や宿題で書くことはありますが、日本のようにそのエッセイのテーマを「本」にして全員に書かせるということはほぼ無いと思います。
なぜなら、本に関する作文であれば、「Book Report」と「Book Review」があるからです。
両者は非常に似ていますが、「Book Report」が本を読んでいない人にもわかるようにその本の内容を要約し紹介することに重きを置いているのに対し、「Book Review」ではその本に対する自分の意見や、人にその本を読みたい気持ちにさせるかどうかがきちんと書けていることが求められているという違いがあります。
自分の考えを書く比率が多い分、「Book Review」のほうが、多少日本の読書感想文に近い感じです。
日本ほど重要視されないアメリカの読書感想文
夏に学年が終わり秋に新学年が始まるアメリカでは、夏休みの宿題が無いのが一般的。夏期講習を行っている学校もありますが、全校生徒に読書感想文を書かせる宿題を出すような学校は、独自の教育を行っている私立校を除くとほぼ無いでしょう。
Book ReportやBook Reviewが宿題にされるとしても、国語の時間に練習する文章の数あるフォーマット(手紙、意見文、詩など)のひとつにすぎません。
日本の「青少年読書感想文コンクール」のような全国規模の大きな感想文コンテストもアメリカにはありません。
夏の読書感想文は、日本の文化ですよね。
型にはまっていることを求められる
アメリカの作文指導はちょっと意外ですが、均一的で、子供たちは驚くほど構成が同じ作文を書きます。いわゆる「ハンバーガー・モデル」です。

学校でこの構成を叩き込まれると我が家の子供も言っていました。その特徴は、ぷかしゅさんがご自身の記事でうまく説明して下さっています。
whostolemysheep.hatenablog.com
もしアメリカで「読んだ本に関するエッセイを書け」と言われたらこのフォーマットで大丈夫というわけです。
しかし、日本の読書感想文にやや近い「Book Review」では、このモデルは使われず、これまただいたいどれも似通ったフォーマットで書くよう指導されています。
以下に代表的なBook Reviewの構成を書きましたが、4番が入っているせいで、アメリカのBook Reviewが日本の読書感想文と大きく違ってしまっている感じになります。
Book Reviewの構成
- 本の題名と作者
- どんな内容か(設定、ジャンル、あらすじ、登場人物など)
- 本に対する自分の意見、考え
- 人に薦めたいかどうか
評価のポイント
要するに、読書感想文ではなく、本当に「本のレビュー」なのです。
ネタバレし過ぎない程度に本の内容やムードをきちんと伝えていて、その本を手にとらせたい(もしくは手にとろうとしていた人を思いとどまらせたい)気持ちにさせる文章が書けていれば評価されるわけです。
無難で良いBook Review例
『シンデレラ』は、ヨーロッパに昔から伝わる童話です。いろんな作者がいますが、私はフランス人作家ペローの『シンデレラ』を基にした○○出版社版の絵本を読みました。
『シンデレラ』は、不遇な境遇に耐えて生きる主人公に信じられないような幸運が訪れ、真実の愛をつかもうとするロマンチックなファンタジーです。
この本のメッセージは、辛くても頑張っていればいつかきっといいことがあるということだと思います。
私はこの美しい童話を、すべての年齢層の人に薦めたいと思います。
悪いBook Review例(情報不足、内容が把握できていない、構成が悪い)
『シンデレラ』を読みました。作者はよくわかりません。多分ディズニーです。
私は、この本を玉の輿に乗るテクニックに興味がある方に読んで欲しいです。でも、グリム兄弟版のほうが、ホラーの要素が満載で脚を切り落としたり目をつぶしたりと楽しいです。
このお話には、玉の輿に執念を燃やす女たちと、女好きの王子、その王子と手を組んでいるに違いない魔女が出てきます。いろいろありますが、主人公のシンデレラは、まんまと王子の魔女の策略にはまり、王子様の新しいお相手にされ、多分すぐに飽きられてお城で退屈で孤独な生活を送るんだろうなっていうような悲しい話です。
私は、この本の一番すごいところは、靴の素材に足の匂いの残らないガラスを選んだことだと思います。しかし、そんなものを持って国中を回るうちに興奮気味の王子が落として割るんじゃないかと心配でした。
悪いほうの例には、「この本を薦めたい」「薦めたくない」という締めの結論が入っていません。
しかし、この定番の終わり方がやはり日本の読書感想文に慣れた者として違和感あります。
アメリカの子供たちのBook Reviewを見ると、以下のような締めの文章ばっかりなのです。
「今まで読んだ中で最高の本、あなたにも気に入ってほしいです。」
「すべてのティーンにこの本をお薦めします。」
「この本は、あなたが今まで読んでどの本とも違うだろう。あなたは一度読みだしたらやめられないだろう。」
「この本を秘密めいたことやロマンスや復讐が好きなすべてのティーンの女の子に読んでもらいたい。」
ひどいのになると、
「この面白い本は、文句なしで五つ星です!」
とか、突然星をつけ出したり。その五つ星は、何個の星の中の5個につけてんだよっていう・・・。アメリカの学校は、本当にアマゾンのレビュアー養成所のようです。
アメリカでは個性的な文章は要らないのか
作文もBook Reviewもフォーマット通りに書くことを教育するアメリカ。国語で書く文章に関しては、意外と日本よりアメリカのほうが同調圧力が強そうです。
このやり方に良いところがあるとすれば、それは「自信を持たせ、書くことの敷居を低くしている」、これではないでしょうか。
文章が苦手な子は、「この順番でこれとあれとそれを書け」と言われてそれに従うほうが楽なはず。日本の読書感想文が難しいのは、求められているものがはっきりしないからかもしれません。自由にやってみろ、と言われてそれなりのものが書けるのは、高い創造性のある子のみでしょう。日本のほうが、文章に関しては高度な能力を子供に求めている感じがします。
アメリカのように型にはめた作文指導だと、個性豊かでクリエイティブなことを書く子供が育たないのでは、とも思いましたが、その辺は「クリエイティブ・ライティング」という授業で育てるようです。クリエイティブ・ライティングに関しては全国的なコンテストも結構あるので、書くのが得意な子はそっちで頑張るのかもしれませんね。
まとめ
アメリカの児童は夏の読書感想文と言う苦行を経験していません。授業でも、読書感想文ではなくアマゾンのレビュー文のような文章を練習するだけ。
日本の学生さんたちは、あいまいな課題を出されても文句も言わずよく頑張っている! 先生方はもうちょっと助けてあげて下さい。やりたい人だけ書く、じゃダメ?