THE X-CHAPTERS

米国から本の話題をお届け

英語が全然わからなくても絶対読める洋書を紹介する!!

 これからご紹介する洋書の数々・・・英語が苦手、もしくは全然わからない方でも最後まで読めますよ。

 だって英語が書いていないから!!

 そうです、今回取り上げるのは「Wordless Picture Book」と呼ばれるジャンルの洋書です。言葉を一切使わず、絵だけでストーリーを表現することに挑戦している本たちです。
 なんだ絵本か~とバカにしたあなた。一度、Wordless Picture Bookの世界を知ったら、そのミニマルかつ深遠な世界にはまります。はっきり言って芸術です。高尚です。子供の読み物と思ってはいけない。これらの本を鑑賞することと美術館に絵を観に行くことと何が違うというのか。

 言葉に頼りがちな私たちに、言葉を使わないことでしか表現できない世界を見せてくれる、そんなWordless Picture Book。
 それだけを集めた本棚を作り、それだけを語っているブログを作りたいくらい好きなのですが、その中からほんの一角のみ、幼児向け→大人向けの順番でご紹介します。

『The Snowman(邦題:スノーマン)』(by Raymond Briggs)

The Snowman

The Snowman

  • 作者:Briggs, Raymond
  • 発売日: 1978/11/12
  • メディア: ハードカバー
 レイモンド・ブリッグズの言わずと知れた名作。Wordless Picture Bookのクラシック。「Wordless Picture Bookって何?」と聞かれたら、「『スノーマン』みたいなやつだよ」と答えればいい。この絵本に言葉は要らない、無い方がいい。その分、ラストシーンが生きてくる。
 この絵本は、アニメーション化されそちらはアカデミー賞にもノミネートされている。でも、原作のシンプルな展開を引き延ばし、効果音が入り、あの有名な主題歌にも ♪We're walking in the air~♪ といった感じで言葉が入ってしまっている。絵のみの表現を試みた原作者の心意識を台無しにしていると感じる。観なくていい、本だけでOK。

『Good Night, Gorilla(邦題:おやすみゴリラくん)』(by Peggy Rathmann)

Good Night, Gorilla

Good Night, Gorilla

  • 作者:Rathmann, Peggy
  • 発売日: 1996/02/01
  • メディア: ボードブック
おやすみゴリラくん

おやすみゴリラくん

 表紙のゴリラは鼻をほじっているわけではない。
 この本は、厳密に言うと完全なWordlessではない。「Good night」というセリフが入っている。しかし、Wordless Picture Bookの定番に上がりやすい一冊。
 Wordless Picture Bookは「英語がわからなくても読める」と書いたけど、「英語」の代わりに「絵」を読まなくてはいけない。絵を、読む。それには、それなりの知性なり感性なり人生経験なり、理解力が必要になる。なので、字が無いからと言って、幼児にわかりやすいかというと意外と難しかったりする。
 この『Good Night, Gorilla(邦題:おやすみゴリラくん)』は、そういう意味では一番幼児向け。2歳くらいから読めると思う。その分、大人には物足りないけれど、前述の『Snowman』も子供向けの本としてはどうなのかというエンディングだし、こういう幼児に分かりやすいWordless Picture Bookは貴重。
 図書館司書さんも貸し出しの際、「この本キュートなのよ~お子さん喜ぶわ~」と嬉しそうに貸し出してくれた一冊。

『Chalk』(by Bill Thomson)

Chalk

Chalk

  • 作者:Thomson, Bill
  • 発売日: 2010/03/01
  • メディア: ハードカバー
 ここ数年、Wordless Picture Book界にめきめきと進出してきたビル・トンプソン。まるで写真のように写実的でありながら、写真では絶対にこの角度この瞬間をとらえられないだろうというような子供たちの一瞬を生き生きととらえている絵が芸術的。登場する子供たちが多人種なのもいい。私の子供たちは、やはり絵本に金髪碧眼の白人だけでなく自分と似ているルックスの子供がいると嬉しいらしい。「○○ちゃん(自分)みたいな顔の、髪の毛が黒い子が出てる~」と喜んでいる。
 この『Chalk』は、子供たちが公園で不思議なチョークを見つけて・・・という単純なストーリー。ストーリーより絵の凄さのほうが印象に残る。
 ビル・トンプソンはこの後『Fossil』『The Typewriter』と立て続けにWordless Picture Bookを出しているけれど、基本的なストーリーが全部この『Chalk』とかぶっている。『Chalk』『Fossil』『The Typewriter』のどれかひとつだけ読めばいい。

『Quest(邦題:クエスト にじいろの地図のなぞ)』(by Aaron Becker)

Quest (Aaron Becker's Wordless Trilogy)

Quest (Aaron Becker's Wordless Trilogy)

  • 作者:Becker, Aaron
  • 発売日: 2014/08/26
  • メディア: ハードカバー
 アーロン・ベッカーのWordless Picture Book三部作のまんなか。美しい。この本の素晴らしさがわかるのは小学校中学年以上か。
 都会に暮らす少年少女。クローゼットの奥にナルニアの国があるように、都会のどこかにもこんな冒険の入り口がきっとある。想像力の無限さを教えてくれる、素晴らしい一冊。
 三部作の一作目『Journey(邦題:ジャーニー 女の子とまほうのマーカー)』から読まず、これだけ読んでもいい。すべて続けて読むとやや冗長に感じる。三部作の真ん中が一番いいというこの不思議。
 ちなみに、絵を見ているだけでは理解できない我が家の幼児に
「そして、ほら、ここで危険が訪れるの、危ない! でもあのすごいクレヨンがあるから~」
などと絵を解釈しつつ読み聞かせ(?)ていたところ、我が家の小学校中学年が飛んできて、
「違うよ!!最初のほうのページで、このクレヨンで___して、女の子が___だから、ここは___になったっていうことなんだよ! お母さん、どうしてわからないの? お母さんにはわからないんだね・・・」
と茫然と言われたことが忘れられない一冊。自分はポーラーエクスプレスの鈴の音を聞くことができない大人になってしまったのだと悟った悲しい瞬間・・・。

デヴィッド・ウィーズナーの本

 真打ち登場、Wordless Picture Book界の巨匠、鬼才、デヴィッド・ウィーズナー。どれから紹介していいのかわからない。どれもすごい。何をどうやったらあんな奇想天外な本が書ける?? ウィーズナーが美術界の過去の偉人と親交できるとしたら、友人はダリ、エッシャー、マグリットだな。
 ウィーズナーは、言葉の入った絵本もたくさん出しているけれど、半分くらいはWordless。言葉を使わない表現方法にこだわっている感じがする。ちなみに彼の言葉入り絵本のほうでは、江國香織さんが日本語版を訳したりしている。へぇー。ウィーズナーと江國香織・・・・・・つながらない。
 ウィーズナーはすでにコルデコット賞(絵本界のアカデミー賞みたいな賞)を三回とっていて、このままだと新作を出すたびにとることになってしまうので、もう殿堂入りとかにしたほうがいい。
 数あるウィーズナーのWordless Picture Bookの中で、3冊選ぶとしたら以下。

『Tuesday(邦題:かようびのよる)』(by David Wiesner)

Tuesday

Tuesday

  • 作者:Wiesner, David
  • 発売日: 1997/08/18
  • メディア: ペーパーバック
かようびのよる

かようびのよる

 ウィーズナー入門編。厳密に言うと完全なWordlessではない。確か「Tuesday night, 8pm」という言葉が入っているページが最初のほうにある。子供ウケが結構いい本。「だから何?」というシュールなストーリー。しかし読後、あなたがどこかでなぜか局所的に大量に落ちている葉っぱを見かけた時、この本を思い出すようになるだろう・・・。

『Flotsam(邦題:漂流物)』(by David Wiesner)

Flotsam (Caldecott Medal Book)

Flotsam (Caldecott Medal Book)

  • 作者:Wiesner, David
  • 発売日: 2006/09/04
  • メディア: ハードカバー
漂流物

漂流物

 ウィーズナーの世界全開。シュールでロマンがありストーリーのスケールが大きくて、そこはかとなく不気味。浜辺で少年が拾った水中カメラ。そこには秘密が隠されていた・・・! 「カメラのフィルムを現像する」という今は無くなった行動がまず懐かしい。英語で、「Let your imagination run wild.」という表現があるけれど、この本では、ウィーズナーのイマジネーションが大暴走してどこかにふっとんで行ってしまった感すらある。こんなカメラに出会いたい。

『Mr Wuffles! (邦題:ミスターワッフル! )』(by David Wiesner)

Mr Wuffles! (English Edition)

Mr Wuffles! (English Edition)

ミスターワッフル!

ミスターワッフル!

 どんなおもちゃを買っても興味なしのつれない猫、Mr. Wuffles。毎日一心不乱に換気口を見つめている。一体なにがおもしろいの・・・? 
 猫だけが知っている!猫は見ていた!という物語。
 巻末に「作者とモデル」という題名の写真が載っていて、ウィーズナーと飼い猫が写っている。多分、ウィーズナーの猫が本当にこんな感じで偏屈なんだろう。飼い猫の奇行(?)もウィーズナーにかかればシュールでコミカルな冒険劇に。ウィーズナーの作品の中ではわかりやすいほう。ほどほどにシュール。
 実は、これも完全なWordlessではない。短い台詞が入っているページが2ページほどある。しかし、ここ以外は登場人物(ヒトといっていいのかわからん)たちは判読不能な言語をしゃべっているので、一応Wordless Picture Bookかと。
 幼稚園児も、おもしろいおもしろいと読んでいた一冊。お子さんとも「ここは○○○って言ってるんじゃない?」などと盛り上げれる楽しい一冊。ウィーズナーの本を誰かにプレゼントするとしたらこれかな。

『One Little Bag: An Amazing Journey』(by Henry Cole)

One Little Bag: An Amazing Journey

One Little Bag: An Amazing Journey

  • 作者:Cole, Henry
  • 発売日: 2020/04/07
  • メディア: ハードカバー
 日本では、『タンタンタンゴはパパふたり』(絵のみ)、『ぼくの ねこは どこ?』が出ているヘンリー・コール。この『One Little Bag』に出会って以来、彼の既刊の作品をほぼすべて借りたけど、この作品がやはり一番素晴らしい。子供より大人のほうが泣いてしまうだろう。
 森の中の一本の木。その木から作られた一枚の紙袋は、アメリカで子供がランチを入れて学校に持って行くのによく使われる定番の紙袋「Brown Bag」となり、あるシングルファーザーと息子の家庭にたどり着いた。そしてそこから長い旅が始まる・・・。
 命や家族、死、人生の意味まで考えてしまう深い物語。エンディングで、あまりにも美しく物語が環になっていて、その鮮やかさに一緒に読んでいた子供の存在を忘れて黙り込んでしまった。
 ある登場人物がこの世から去ったことをお墓やお葬式の絵を使わず、さりげなく表現しているのもいい。作者のやさしさを感じる。
 幼稚園児にはちんぷんかんぷんだったようだけど、小学校中学年の子供は、
「すごくすごく面白い本だった、お母さん、(見つけて借りてくれて)ありがとう!!」
と本を胸に抱きしめて言っていた。小学校中学年以上~大人向けの本かな。私にとって忘れられないWordless Picture Bookになった。


 以上、もっともっとあるのだけど、涙をのんでWordless Picture Bookの世界のほんの一部のみをご紹介しました。

 最後に、現在幼児を子育て中、もしくはこれから子育てする皆さん。

 特に周囲の助けをあまり借りることができず、自力で子育ての大変な時期を乗り越えなくてはならない状況のお父さん・お母さんは、孤独で、単調で、報われることも認められることもなく、魂を削られていくような疲労感を覚えることも多いと思います。甘いものに走ったり、アルコールが欲しくなったり、子供をうっちゃってスマホをいじったり、そんなことしか楽しみが無い日々もあることでしょう。
 しかし、それらは一瞬楽しいだけで必ず罪悪感も伴い、本当の意味で辛い日々を助けてくれることはありません。代わりに家事だの用事だの何もかもうち捨てて外にお子さんと一緒に出て遊びながら深呼吸をするか、もしくは是非是非図書館に行って絵本の世界にはまって下さい。思いがけなく面白い作家に出会ったり、大人もうなるすごいストーリがあったり、宝探しのような日々が始まります。
 私が上記に紹介したような絵本を読んでも、あなたの収入は増えず、フォロワーも増えず、お子さんも芦田愛菜ちゃんのような賢い子になることはないでしょう(本好きは生まれつきの資質のような気がします)。ただし、毎日美しい絵や作家の想像力の結晶である物語を鑑賞することで、必ず魂に栄養が注がれると思います。始める前は結構めんどくさくても、子供と絵本を読み終わった後、私は「時間を無駄にした」と思ったことは一度もありません。

 辛い一日を終えて眠りにつくとき、絵本をめくった時間は、暗い海で輝く灯台の明かりのようにそこだけ輝いて見えるはず。大人も子供も、美しい絵と物語の世界にもっともっとはまりましょう!!

 皆さんも素敵なWordless Picture Bookを発見したら、こちらまで通報よろしくお願いいたします!!

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