THE X-CHAPTERS

米国から本の話題をお届け

【本棚探偵 第四弾】アンソニー・ホプキンズ、レジーナ・キング、ポール・ラッド

 有名人の動画の背景に映った本棚を勝手に解析する本棚探偵、第四弾になりました。
 
 米国全土でワクチンばらまきが進んだせいで、自宅から本棚を背景にリモート出演してくれるセレブが激減。もう本棚探偵、仕事激減で廃業の危機です。

 が、私の有名人本棚画像コレクションには、まだまだ在庫がありますよ。パンデミック真っ最中の昨年の動画からの抽出画像が中心となりますが、今回は以下の三人をチェックしてみましょう!

アンソニー・ホプキンズ

 認知症を認知症者の視点から描いた意欲作として話題の映画『The Father(邦題:ファーザー)』。この映画で、英国の名優アンソニー・ホプキンズは認知症が進行していく男性の恐怖や混乱、とまどいを見事演じきり、2021年のアカデミー賞主演男優賞を受賞! 
 授賞式の流れ的に、
「故チャドウィック・ボーズマンが遺作で受賞、感動のフィナーレ、来るぞ来るぞ~」
とみんなが構えていたところを華麗にかっさらっていったアンソニー・ホプキンズ。微妙な受賞でちょっと気の毒だったけど、史上最高齢(83歳!)、二度目の受賞、やはり快挙であることは間違いない。
 そのアンソニー・ホプキンズ卿、かなり意外ですが、インスタだのTikTokだのSNSで情報発信していらっしゃいます。 人に注目されなくなったらボケるから、というのが動機のようですが・・・。
 楽しそうなダンスやらかなり本格的な絵画制作やらピアノ演奏のお姿やらを惜しげもなく披露されており、そんなものを見てしまった日には激しく困惑しました。イメージが崩れます。ホプキンズ卿よ、あなたはハンニバル・レクターだったはず・・・カズオ・イシグロ小説の老執事だったはず・・・
 本棚画像は、そんな動画の中で、2020年年末にTikTokにアップロードして下さった一つから頂きました。

@anthonyhopkins

With gratitude, I celebrate 45 years of sobriety.

♬ original sound - Anthony Hopkins

 アルコール依存に苦しんだ結果、45年前のこの日に断酒に踏み切ったそうで、ご自身の断酒記念日に、パンデミックで辛い一年を送った若者たちを励ましている素敵なメッセージ動画です。でも・・・

「今日という日は、昨日君たちが心配していた明日なんだよ。(Today is a tomorrow that you are worried about yesterday.)」

・・・・・・????? どんなに悩んでも未来が来るってことですか? そんな月曜日の次は火曜日さ!みたいなこと言われても。わけがわかりません。

 そんな彼のこの本棚、どうやらここはアート関係の本を中心に置いてあるセクションのようですよ。

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アンソニー・ホプキンズの本棚

① 『American Visions: The Epic History of Art in America』(by Robert Hughes)

 著書やテレビシリーズなどを通して美術評論を発信しているオーストラリア出身の美術評論家ロバート・ヒューズの本。彼の著書では、『西欧絵画に見る天国と地獄』などが和書に翻訳されているけれど、この本は未邦訳。本書は、ロバート・ヒューズが出演・製作したBBCの同名ドキュメンタリー・シリーズの書籍版で、アメリカにおけるアートの起源とその発展の歴史が解説されている。

② 『One Song: A New Illuminated Rumi(邦題:ルーミー 愛の詩)』(by Michael Green)

ルーミー 愛の詩

ルーミー 愛の詩

  • ナチュラルスピリット
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 13世紀の「ペルシャ語文学史上最大の神秘主義詩人」*1、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの詩をジョージア大学教授コールマン・バークスが現代語に翻訳、それにイラストレーターのマイケル・グリーンが絵をつけた詩集+画集。

③ 『Saving Wildlife: A Century of Conservation』(Edited by Wildlife Conservation Society)

 1890年代にニューヨークのブロンクス動物園を開園するため、ニューヨーク動物学協会という団体が設立された。その団体はやがて世界中の絶滅危惧種や自然環境の保護の団体へと成長していく。その100年を写真や記事、書簡などで追った本。

④ 『Decade』(Edited by Eammon McCabe and Terrence McNamee)

Decade

Decade

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 21世紀の最初の10年、つまり2001年から2010年までの時代を象徴する瞬間をとらえた写真500点を英国の写真家イーモン・マッケイブが選出、編集した写真集。

⑤ 画集多数
 ピカソ、デイヴィッド・ホックニー二冊、フランシス・ベーコン、モディリアーニ、ダリ、ジャック・ベトリアーノなどなどずらり。TikTokでも絵画制作の風景をよく見せてくれるホプキンズ卿、芸術への愛を感じる。

 なんか①~⑤まで画集とかアートの本ばっかり・・・普通の小説とか読まないのかな・・・?と思ったあなた。はいどうぞ、ドーン!

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アンソニー・ホプキンズの本棚その2

 CBCカナダのインタビュー番組に映画の宣伝で出演した際の動画からいただきました。
 先に捜査した本棚が絵や写真の多い大型本本棚とすると、こちらは字中心の本が置かれた本棚という感じ。どちらかというと、こっちをピント合わせて見せてほしかった。大スターなのになんでこんな解像度低そうなカメラ使ってんだ! この一冊しか見えないじゃないかー!!

⑦ 『Mount!』(by Jilly Cooper)

 ジャーナリスト、ノンフィクション作家を経て、長編ロマンス小説家となったジリー・クーパーの本。彼女の代表作であるラトシャー・クロニクル・シリーズ10冊目となる最新作。これがまたすごそうなシリーズで・・・。イギリスの架空の地方ラトシャーの上流階級を舞台にした一大群像劇大河ロマンスで、競技馬術の世界と淫らな大人の世界が融合した作品・・・「S○X+馬」な世界が繰り広げられているとか・・・。そこかしこに、大人たちがあんなことやそんなことをしているシーンがある、人前では読めない小説。
 こんな楽しそうな小説を本棚に置いているとは・・・アンソニー・ホプキンズ、おぬしもワルよのう!
 
 以上、アンソニー・ホプキンズ卿の本棚でした。
 ちなみに、動画「『ファーザー』アンソニー・ホプキンス インタビュー映像」を観た所、ご本人曰く「私は引退するには若過ぎる。引退する気はまだ全くない」そうです。言葉や詩への愛も熱く語っておられ、
「暗記マニアなんだ。詩でもなんでも暗記する。それが脳を活性させているんだ。」
とのことで、蔵書数の多さも納得。
 アンソニー・ホプキンズ卿の今後のますますの名演を期待してしまう本棚でした。

レジーナ・キング

 ホプキンズ卿に続き、こちらもオスカー受賞の女優、レジーナ・キング。最近ではHBOドラマ『ウォッチメン』では覆面黒衣のスーパー・ヒーロー「シスター・ナイト」に扮し、昨年は『One Night in Miami(邦題:あの夜、マイアミで)』で映画監督デビューも果たした、かっこいいとこ全部持ってっちゃってる姐さん。本棚もいい感じ。俳優同士の対談企画、アクターズ・オン・アクターズにリース・ウィザースプーンと出演してくれた際の動画からいただきました。

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レジーナ・キングの本棚

① 『Waiting to Exhale』(by Terry McMillan)

 故ホイットニー・ヒューストン主演で『ため息つかせて』というタイトルで映画化もされたテリー・マクミランのベストセラー小説。四人の黒人女性の恋や友情が描かれている。

②『The Science of Mind(邦題:心の科学)』(by Ernest Holmes)

 1926年(古い!!)刊行、宗教科学の創始者、スピリチュアル運動の草分け的存在であるアーネスト・ホルムズの著作。心に迷いが生じた時、インスピレーションをくれる一冊・・・だそうですが、スピリチュアル系のものがいまいち理解できない私には、書評や書籍の内容紹介を読んでもどうにも説明できない本。

③ マルコム・グラッドウェル3連発
『blink(邦題:第1感)』、
『Outliers(邦題:天才! )』、
『The Tipping Point(邦題:急に売れ始めるにはワケがある)』

 出た! ノンフィクション界のロックスター、マルコム・グラッドウェル。グラッドウェルの過去のベストセラーが三冊どんと並んでいます。3冊とも邦訳が出ているけれど、中でも『Outliers(邦題:天才! )』の翻訳が勝間和代さんということにびっくり。いろんなお仕事されてるんですね。
 グラッドウェルに関しては、よかったら先日の当ブログの記事をご覧下さい。
blog.the-x-chapters.info

④ 『Ghettoside: A True Story of Murder in America』(by Jill Leovy)

 ジャーナリスト、ノンフィクション作家であるジル・レオヴィによる2015年のベストセラー。ジェノサイドやホミサイドならぬ造語であるタイトル『ゲットーサイド』が示す通り、ロサンジェルスのゲットー(黒人が多く住む地域)で、まるで疫病の流行のように発生する若い黒人男性の殺人事件、執念の捜査を繰り広げる捜査官たち、司法制度の問題を追ったノンフィクション。 読み始めたら止まらない内容、米国における警察のマイノリティへの過剰暴力の問題の考察になっている、と読者にも批評家にも評価の高い一冊。

⑤『After Jackie: Pride, Prejudice, and Baseball's Forgotten Heroes』(by Cal Fussman)
ISBN:1933060182:detail
 黒人初のメジャー・リーガー、ジャッキー・ロビンソンの功績は、球界のみならず、スポーツ界全体、政界、公民権運動にまで大きな足跡を残した。その後の世代のメジャー・リーガーや著名人への膨大なインタビューを通して、彼がアメリカをどう変えたかに迫ったノンフィクション。

 以上、レジーナ・キングの本棚でした。
 本棚探偵やってて、いろんなセレブの本棚を見るわけだけど、女性セレブでレジーナ・キングみたいに本棚を前にリモート出演をする人がほとんどおらず、かなり寂しい。俳優(男優)ばっかりです。どうした女子! 美容に忙しくて本を読む暇が無いのか? それとも恥ずかしいのか? さあさあ、もっと見せてごら~ん? 
 女性セレブたちよ、レジーナやリースみたいにもっとたくさん本を読んで、男優たちに負けないくらい本棚も見せびらかしましょう!!

ポール・ラッド

 2015年にから身体縮小能力を持つヒーロー、アントマンを演じてアベンジャーズ入りを果たし、世界的にブレイクした俳優ポール・ラッド。ポール・ラッドと言えば、青春コメディ映画のクラシック『クルーレス』(1995年)での主人公の相手役を始め、息の長いキャリアの持ち主ながら、童顔が功を奏しているのか若い頃から顔が変わらないことで有名。しかし、本好きということはあまり知られていないのでは? どちらかと言うと、親しみやすく軽い感じの役が多い俳優なので、この本棚はちょっと意外。もう一気にファン。
 本棚画像は、病院のためのファンドレイジングイベントに出演した際の動画と、ロックダウン中に出演してくれたサタデーナイトライブのスケッチ動画より。

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ポール・ラッドの本棚その1
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ポール・ラッドの本棚その2

① 『Triangle』(by David von drehle)
ISBN:0871138743:detail
 1911年にマンハッタンのトライアングル・シャツウェスト社の工場で起こった米国史上、死者数最大の火災事故に関するノンフィクション。犠牲者146人の大半が若い移民女性で、工場のずさんな建物管理の犠牲となった痛ましい人災であり、アメリカの工場の安全基準を大きく変えたターニング・ポイントとなった産業災害だった。なんか・・・アメリカ版、ホテル・ニュージャパン? 非常口から逃げられなくて飛び降りて亡くなった方が多いところなんかも似ている・・・。

② 『The Last Lion』(by William Manchester, Paul Reid)

 米国の歴史家、伝記作家ウィリアム・マンチェスターによるウィンストン・チャーチルの伝記の2巻と3巻。ウィリアム・マンチェスターの著作は、マッカーサーの伝記なんかが邦訳されているけれど、こちらは未訳。
 しかし、この本・・・この私の狭い読書体験でやたら出会うので気味が悪い。本棚探偵第二弾で登場したアーノルド・シュワルツェネッガー氏の本棚にもあったし、先日読んだマイケル・ルイスの『The Premonition』の実質上の主役の公衆衛生官も読んでいたし、マルコム・グラッドウェルの『トーキング・トゥ・ストレンジャーズ』にも出て来たし・・・。なんか今、チャーチル・ブームなんですか? それともリンカーンみたいに、英米圏の人は一生に一度チャーチルの伝記を読むもんなんですか? 

③ 『Piecework』(by Pete Hamill)
ISBN:B07D7GPVXN:detail
 昨年2020年に他界されたアメリカの名コラム二スト、小説家、ジャーナリストのピート・ハミルが1996年に刊行したコラム集。ピート・ハミルの著作や小説は多くが邦訳されているけれど、この本は未訳。社会問題からスポーツまで、幅広いトピックに関して名文が繰り広げられている。

④ 『Three Complete Novels: Setting Free The Bears, The Water-Method Man, The 158-Pound marriage(邦題:熊を放つ、ウォーターメソッドマン、158ポンドの結婚)』(by John Irving)
ISBN:0517146541:detail
 『ガープの世界』『ホテル・ニューハンプシャー』などで知られる米国人作家ジョン・アーヴィングのデビューから初期の長編3篇が収められた分厚い本。アーヴィングは、日本で翻訳に恵まれているせいか、もしかしてアメリカより日本でのほうが人気があるのではないかと思うくらい。日本では、これらの小説は3冊の本に分かれて出版されています。

⑤ 『Trying to Save Piggy Sneed(邦題:ピギースニードを救う話 )』(by John Irving)
ISBN:1559703237:detail

 ④に続き、またジョン・アーヴィング。この本は、アーヴィングの短編小説とエッセイが収められている。
 ちなみにポール・ラッドは、アーヴィング自身が脚本を担当して映画化された『サイダー・ハウス・ルールズ』の主要キャストの一人でもある。アーヴィング作品の愛読者なんでしょうね。

⑥ 『Code of Conduct:The Scot Harvath Series(15)』(by Brad Thor)
ISBN:147671715X:detail
 米国人作家ブラッド・ソーによる人気スリラーシリーズの15作目。特殊部隊SEAL出身で、大統領警護をやったり民間情報組織に所属したり、とにかく世界中でやたら危険な任務をこなす男スコット・ハーヴァスが主人公のドキドキハラハラのスリラー。
 日本では、シリーズの一作目・二作目と、なぜか飛んで11作目が翻訳出版されている。
ISBN:4150410151:detail
ISBN:415041047X:detail

⑦ 『Jude the Obscure(邦題:日陰者ジュード)』(by Thomas Hardy)

 古典英文学の定番が来ました、英国のレジェンド作家の一人トマス・ハーディの代表作。貧困に喘ぎながら学問の世界を夢見て挫折して行く青年ジュードの物語。

⑧ 『Hannibal (邦題:ハンニバル)』(by Thomas Harris)
ISBN:038529929X:detail
ISBN:410216703X:detail
 トマス・ハリスによるサイコ・スリラーの傑作クラシック、ハンニバル・レクター・シリーズ。この『ハンニバル』は、『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』に続く三作目で一応完結編(この作品の後に出た『ハンニバル・ライジング』は前日譚)。トマス・ハリスは熱心なファンがいながら寡作、しかし書いた作品はすべて映画化されているという数より質で勝負(?)の作家。

 以上、ポール・ラッドの本棚でした。
 やや古めの本が多いですが、ノンフィクション、純文学、エンタメ系の本と幅広く網羅して読書を楽しんでいる感じ。いいぞ、アントマン! これからも応援するぞ!


 今回は、三人とも図らずも映画俳優特集となってしまった本棚探偵。いや~しかしほんと、本棚の前から出演する俳優が多い。感覚的に、本棚見せ率としては、

学者 > 作家 > 俳優(男優) >>> ビジネスパーソン >>>>>>>>> 女優 > ミュージシャン >>>>>>>>>>>>>>> アスリート

という感じ。
 本棚を見せていない人=本を読んでいない人、ではないと思うんですけどね。世間に自分の何を見せるか、見せたいか、見せてもよいと考えているかの違いだと思います。
 私は本が好きですが、本棚の前からzoomするのはイヤです・・・。『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』とか『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』とか世界に公開すんの嫌です・・・。

 では、本棚探偵第五弾もお楽しみに。

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*1:Wikipediaさんはそう言っておられます