THE X-CHAPTERS

米国から本の話題をお届け

ワクチンに関する偽情報・誤情報の65%を流している12人、【Disinformation Dozen】はどんな著作を出しているのか

 「7月4日の独立記念日までに、接種の資格がある国民の7割がCovid-19のワクチン接種を完了する」

バイデン政権発足当初の上記の目標を、約一か月遅れで8月初旬についに達成したアメリカ。しかし、ここまで長かった。
 ワクチンの数は充分にあり、ワクチン宝くじだのなんだのあの手この手で接種させようとしているのに、遅々として接種数が伸びない日々が続いた。その道のりの途中で、大きく話題になったのが、バイデン大統領の

「Facebookのようなソーシャルメディアは人を殺している(They are killing people)」

という発言。

「いいですか、今、コロナで亡くなっているほぼ全員がワクチン未接種の人たちです。だから、人々にワクチンを受けさせないよう仕向けるような誤情報を発信しているFacebookは人を殺しているのです。」

 バイデンのお得意の言い過ぎ発言が久々に出た! Facebook怒る、怒る。バイデンもワクチン接種数が伸びなくて焦ってたし、ソーシャル・メディアに頭に来てたんでしょう。その後の謝罪・火消しが大変そうだったけれど、実はこの失言の半分は正しいそうで。
 ホワイトハウスが、誤情報や陰謀論を信じてワクチンを頑なに拒む人たちにどこでその情報を得たのかを聞き取り調査したところ、多くの人が「Facebookで見た、読んだ」と回答したそう。
 そして、Center for Countering Digital Hateという団体の調査リポートによると、そのFacebookとTwitterで発信された反ワクチンのコンテンツの65%はたった12人のアカウントから来ているとのこと。Facebookだけだと、73%以上になるそうで。
 バイデンは、「Facebookは人を殺している」ではなくて、「Facebookで誤情報をまき散らす12人は人を殺している」と言うべきでしたね。
 この12人は、これまでも反ワクチンの人々(Anti-vaxxers)にはよく知られた存在だったものの、このリポートが発表された後、「Disinformation Dozen」なるグループ名までつけられて一躍時の人に。ファンタスティック・フォーみたい。
 現在、数々のソーシャル・メディアが彼らのアカウントを削除・停止していますが、他のアカウントを作成したり、ロシア発の秘匿性の高い通信プラットフォーム「テレグラム」に拠点を移したりして、まだ元気に活動中。

 そして、検閲の手が及ばない最後の聖域(?)、書籍の世界で情報発信すると言う手もあります! 

 ということで、彼らの過去の著作を通して、12人がそれぞれどんな方々なのか、ご紹介していきたいと思います。紹介してどうするんだよと怒られそうですが。決して「是非読んでね!」ではありません。むしろ、「要注意図書ですよ」という特集です。あとは、単なる私の興味と好奇心による「全力捜査」企画の一環です。

 以下の12人のうち数人は日本にも進出しています。日本のメディアや個人ブログになどにも、権威の意見として名前を出されている例も散見しています。健康や医学、ワクチンに関していろんな考えや意見ががあるのはわかりますが、彼らの名が付く情報や商品、著作には、「情報の真偽が問題になっている人たちによる情報なのだ」ということを頭に置き、常に疑問を持ちながら接していただきたいと思います。ご家族や大切なご友人が彼らの著作を読んでいたら、要注意です。
 
 偽情報・誤情報の罠にひっかからないためにも、反ワクチン派を理解するためにも、Disinformation Dozenをよく知っておこうではありませんか!

(1) Joseph Mercola(ジョセフ・メルコラ)

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メルコラ医師のYoutubeチャンネルの動画https://youtu.be/dILSt_EQgNMより

 反ワクチン業界(?)の大物。ちゃんとライセンスのある医師。
 アメリカでは、「医師」と言えば「MD(Doctor of Medicine、医学博士)」の肩書きが一般的だけど、近年増えてきているのがこのメルコラ医師の持っているライセンス「DO(Doctor of Osteopathy、整骨医)」。整骨医と言っても、カイロプラティックの医者というわけではない。MDの医師と同じほぼ同じトレーニングや試験を受けているれっきとした医師で、同じような診療行為ができる。こやつのようなやからのせいで、DOのライセンスを疑問視する人まで出てきて、ちゃんと仕事しているDOの医師がかわいそう。
 しかし、このジョセフ・メルコラは、病院やクリニックで患者を診ている医師ではなく、医師の肩書を利用したビジネスマン。動画で
「私の長い診療歴の中で、そういった症例は一度も観た事がない!」
などと言っているけれど、「患者を診察してないだろ」と総ツッコミ。ホメオパシーとか、食事療法とか、主流の医学と異なるアプローチを売り物にしていて、情報商材やサプリメントを売るビジネス帝国を築き上げ、もうガッポガッポの方。悔しいけど金儲けの手腕はすごい。
 ドクター・メルコラ印のサプリや健康食品で日本にも進出しているけれど、著作のほうは未邦訳。以下の著作を見てわかる通り、一見してあやしいトンデモ本という感じは無く、権威ある医師の書いたファクト・チェックされた情報に見せるのがうまい。ポイントは、小難しい医学の知識を展開しつつ私見・主張を混ぜているところ。論文引用などもあるけど、マイナーなものやものすごく古いものから自分に都合の良いところを選んでいる。一般人がそれらを分析して批判的な思考を持って読むことは難しく、読んでいるうちに完全にメルコラ医師のペースにはまって気が付いたらあら不思議、メルコラ医師のウェブサイトでサプリメントをクリックしていた・・・!!という流れにはまる人が多数。
 以下は、2021年4月刊行のメルコラ医師の最新本。オーガニック食品推進者との共著によるパンデミック関連本です。

 さすがドクター・メルコラ。パンデミックというまたとないビジネスのチャンスは見逃さない。本の前半でたっぷりと
「政府も製薬会社も小売店も、何もかも信用できない!あいつらはパンデミックで儲けているだけ!!」
と陰謀論を展開し、暗に「信用できるのは私のような誠実な医師」と言いたい様子。あんたもパンデミックで儲けてるでしょ。そして、メルコラ医師のウェブサイトで発売中のドクター・メルコラ印のサプリメントで、コロナウィルスが体内で増殖するのを予防できるとのことです。す、すごい、ノーベル賞ものでは・・・???
 まあ、コロナウィルス以外の医療問題でも、今までほぼすべてこういうアプローチで、「あいつらは信用できない」と主流の医学への不信感や問題への恐怖をあおり、ドクター・メルコラ印があれば大丈夫さ、という流れのようです。
 こちらは「電磁波は危ない!5Gは健康被害を及ぼす!」という本。 ちゃんと電磁波に破壊されたDNAの修復方法も提示されていて、もちろんそれはメルコラ印の水素水タブレットとかサプリメントです。奥さん、メルコラ印のタブレットを水道水に入れるだけで水素水作れるんですってよ!水素水サーバー要らずですってよ! もうメルコラったら商売上手。
 過去には、以下のようなケトジェニック・ダイエットの本も数冊出しています。この本あたりまでは、まだ批判は少なかったようなのですが・・・。 やはり、ワクチンに関する誤情報はケト・ダイエットと深刻さが違い、生死を左右する問題なので、一部からは「こいつから医師免許をはく奪しろ」という批判も出ている。
 今回、Disinformaton Dozenのトップに選ばれたことに関しては、メルコラ医師は、
「私のFacebookのポストでは数百しかいいねがついていないものだってあるのに、Disinformation Dozenの親玉のように扱われるなんて!魔女狩りだ!私には、自身の研究に基づく考えを発表する権利がある!!」
と抗議の姿勢を見せておられます。
 National Vaccine Information Center (NVIC、全国ワクチン情報センター)、Organic Consumers Association (OCA、オーガニック消費者協会)などの団体の主な出資者であり、主流のソーシャル・メディアでの個人アカウント停止を受け、今度はそうした団体を通して反ワクチン・代替医療推進活動を頑張っておられます。
 もしかしたら、本当に真剣に代替医療の可能性を信じて、代替療法の普及に使命感を持っておられる方なのかもしれませんが、金の匂いがプンプン漂ってくるのが気になります。

(2) Robert F. Kennedy, Jr(ロバート・ケネディ・ジュニア)

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ワクチンや気候変動に関してYahoo!Financeとのインタビューで語るRFKジュニア 動画https://youtu.be/zyxEo2kqo08より

 暗殺されたジョン・F・ケネディ大統領の弟で、後にこちらも暗殺されたロバート・ケネディ元司法長官の息子、ロバート・ケネディ・ジュニア。つまりこの方はケネディ元大統領の甥っ子さんにあたるわけですが、反ワクチン活動家になっていたとは! Disinformation Dozenの中のセレブ枠ですな。
 しかし、この方は医療の専門家ではなく、職業は弁護士。ハドソン川再生などで知られる環境弁護士だったのに・・・

 以下のような本を編集して出してますが、医学や化学は専門外。「ワクチンが自閉症の子供を増やした」というとっくの昔に誤りであることが証明されている説を推している本です。 ケネディ家の絶大なネームバリューをあちこちで利用されている感がある。ほら日本でも! その界隈の方に利用されている!!

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日米二大巨頭、ねえ・・・うーん・・・

 展開している主張が、後に登場する方々ほどトンデモではないところが人々の信用を買っている理由のひとつだと思われます。この方の場合、金に困っているとは思えないので、どういう儲けの意図があるのかよくわからないけれど、反ワクチン業界(?)では大人気で、この方やこの方の主催団体であるChildren's Health Diffenceが反ワクチン情報の動画をちょこちょこ出すだけで広告収入がすごいとか。
 ロバート・ケネディ・ジュニアが、この反ワクチン運動、反ワクチンビジネス(と呼んでもいいと思う)に入ったきっかけがかなり悲しい。環境弁護士として、大企業がいかに環境に有害なものを平気でまき散らし政府がそれを野放しにしているかを目のあたりして、彼らへの不信感の塊のようになっていたところに、どっかの母親が「ワクチンに入っている水銀で子供が自閉症になる!!あなたならなんとかできる!!」と科学的に誤った情報を陳情のように持ちこみ、「またか!また水銀垂れ流しか!!」と反ワクチンの考えにのめりこんでしまったという。まあ、それは好意的な見方で、弁護士として金のとれる案件をかぎつけただけかもしれませんが。
 そうして、反ワクチン業界に参入してしまったあとはもう反ワクチン活動家として祭り上げられ、もう引き返せないところに来ている。11月にはアンソニー・ファウチ批判本まで出すみたいですよ。(ファウチさんは日本で言う所の尾身茂先生みたいな方です)

 ちなみにケネディ家は、わざわざ「ボビーの考えはケネディ家全体の考えではありません」と彼との見解の違いを公にしています。

(3) Ty and Charlene Bollinger(タイ&シャーリーン・ボリンジャー)

 夫婦で反ワクチン運動を頑張っておられるこの方々。夫のタイ・ボリンジャーは、書籍『がんについて知っておきたいもう一つの選択』で日本進出を果たしておられます。

 原著はこちら。 原著タイトルと同名のウェブサイト「The Truth About Cancer」で大人気となった方。この本の肝は、第三章で著者が提案している治療法の箇所だと思われますが、目次を見るとどんな本かよくわかると思います。

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『The Truth About Cancer』の第三章目次

 つまり、ボリンジャー夫妻はがんに対する代替療法推進で名を成し、そして財を成した方々なのです。だがしかし!! この二人にはなんの医学のバックグラウンドもありません。タイ・ボリンジャーは元ボディ・ビルダー。健康に対して高い意識を持っている方なのかもしれませんが、展開している持論は別に診療行為や実証を伴う研究を自ら行った結果ではなく、多分Googleが使えれば書ける内容と思われます・・・。
 しかし、それで数冊著書を出し、ウェブサイトも大ヒットさせ、ガッポガッポ稼ぐマーケティング手腕はすごい。奥さんは、動画とかソーシャルメディア担当かな。なんかファッションも場違い・・・? 「がんは死刑宣告じゃない、いつだって希望はあるんだ」という励ましのメッセージはいいんだけど、画像が「ゴージャスな私たちを見て!本当はがんなんてどうでもいいの!お金が大好き!!」に見えてしまう。

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インスタグラムより

 がんをなんとかしたい、と頑張っている人たちを食い物にしてませんか。ちゃんと信念があってやっていらっしゃるのならいいのですが。
 日本語版が出版された前述の書籍のほかにも、未訳の著書が複数ありますが・・・。なんか表紙が怖い。「変な表紙警察」を出動させたくなる。

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右側の本の方はかなり売れた

 なんでどうしてこんなノリの夫婦が代替医療ビジネスで何億も稼げるの? どうしてこんな人たちを信用できるの? 命がかかった選択の参考にするには、こんなノリの人たちの情報は参考する気になれないんだけど・・・。代替医療のすべてを否定するわけではないし、ワクチンに関してもこの方々の言い分の一部は正しいと思うのですが、あまりにもノリが軽すぎやしませんか。

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一般人のワクチン接種が始まる前からこんなインスタ投稿

 「The Truth About Cancer(がんに関する真実)」ビジネスで大儲けした彼ら、今度は「The Truth About Cancer and vaccines 2020 (がんとワクチンに関する真実)」に軌道修正して、反ワクチンビジネスでも大成功しているようです。ボリンジャー夫妻監修&出演の本とビデオからなる特別コースを受講するとワクチンに関する真実が勉強できるんですって。お値段は2万円~4万円の間。
 「ビル・ゲイツがワクチンにマイクロチップを仕込んでいる」、「中絶手術から得られた胎児の細胞がワクチンに入っている」などを主張しているのも彼らなので、そういった情報の真偽は推して知るべし、です。
 ほんとうにもう・・・どうやってこんなレベルで人に何万円も出させることができるの? 
 マーケティング手法を教える情報商材を出したほうが売れるんじゃないの?

(4) Sherri Tenpenny(シェリー・テンペニー)

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州議会でワクチンの危険性を証言するシェリ・テンペニー 動画https://youtu.be/MH8zPY1CsYYより

 ちゃんとライセンスのある医師。(1)のメルコラ医師と同様に、MDではなくDO。しかし、メルコラ医師と違って、病院での診療経験もちゃんとあり、オハイオ州に自身のクリニックもある。
 過去の著書『Saying No to Vaccines』からもわかる通り、長年に渡る強烈な反ワクチン主義者。

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『Saying No to Vaccines』表紙、それなりにまともに見える

 「ワクチンで子供が自閉症になる!!」というもう科学的に覆された説をばっちり書いています。(2)のロバート・ケネディ・ジュニアといい、自閉症を自分の反ワクチン説の強化に使うのやめてほしい。自閉症の子供をサポートする気なんてさらさらないんだよね。懸命に生きている自閉症者の気持ちなんてどうでもよくて、自分に都合よく「自閉症」を使ってるだけ。
 鳥インフルに関する陰謀論の本も出していますね。

 このあたりから、ぐっと代替医療ビジネス側に入った感じが表紙の怪しさからも伝わります。
 先日は、なんとオハイオ州議会で現役医師としてワクチンの危険性を証言する際、以下のようなことを言って世界を仰天させた。
「ワクチンには金属が入っていて、接種者を磁化(Magnetize)する」
「接種者が5Gタワーのインターフェイスになる何かが入っている」
「ネットで、鍵やスプーンが体にくっつく画像や動画を観たでしょう?(※筆者注:マグネット・チャレンジと言われているもので、もう科学的にDebunkされている)」
 ということは、ワクチン接種を完了した私もマグニートー? 
 こんなに世界にバカにされてもワクチンの危険を訴えて・・・本当にみんなの健康を真剣に考えているんだね!テンペニーさん!!と言いたいところだけど、もちろんこの人もパンデミックで大儲けの一人。現在60代のブーマーながら、ソーシャルメディア・マーケティングの手法や、「ワクチンの危険から身を守る」というようなウェブ・セミナーでの稼ぎ方、(3)のボリンジャー夫妻とのアフィリエイト契約(テンペニー医師がイベントやインタビューなどでボリンジャー夫妻の教材を薦めて売れるといくらかもらえる)など、金儲けはミレニアム世代も真っ青の最先端を行っています。書籍よりそっちのほうが儲かるからか、ここ数年は本は書いていないようです。残念・・・?
 

(5) Rizza Islam(リザ・イスラム)

 反ワクチン・キャンペーンの黒人担当、ブラザー・リザ・イスラム。日本進出は難しいか。リザ・イスラムは、1990年生まれのミレニアル世代でこの12人の中では断然若手。医学の専門家などではなく、プロの社会活動家で、かつてマルコムXが所属したことで有名な黒人独自のイスラム教系組織「ネーション・オブ・イスラム」でぐんぐん台頭している人。「ネーション・オブ・イスラム」が反ユダヤ、反LGBTQ+の黒人至上主義極右グループと化しているため、日本進出どころかアメリカ国内でもブレイク(?)は難しいかもしれない。
 本も以下の一冊のみ。ミレニアル世代に向けてなにやらメッセージを送っているようだけど、自費出版・・・? リザ・イスラムのウェブサイトから購入可能。

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リザ・イスラムのウェブサイトより

「ワクチンは黒人の人口削減プロジェクトの一環だ」
「ワクチンで特に黒人の子供が自閉症や死に至る病気になる」
などなどの発言からもわかる通り、長年に渡る反ワクチン主義者である彼が、このコロナ騒動を見逃すわけがない。
 早々とFacebookからはBanされたものの、その後も若者らしくインスタグラムやTwitterなどのソーシャルメディアやYoutubeでの動画投稿を駆使して、反ワクチン運動を展開。
「コロナのワクチンで不妊になる」、「ビル・ゲイツの陰謀だ」、
「ジョンソン&ジョンソンのワクチンには中絶胎児から採取した細胞が使われている」・・・もう水を得た魚のように、反ワクチン活動を頑張っておられます。知名度も上がり、ネーション・オブ・イスラムでの地位も上がったようです。

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こんなインスタ画像まで名前入りで作って・・・

 アフリカン・アメリカンのコロナ犠牲者の数の多さが度々ニュースになっているというのに・・・。彼らには、タスキギー実験など痛ましい歴史もあり、そのせいでただでさえワクチンを疑問視する土台がある上、リモートワークができない職種に就いている人や、副反応で仕事を休んだりもできない職種の人も多いと聞く。
 リザ・イスラムさんよ、君の言うところの「黒人の間引き」を君自身が助けていやしないか? 君は同胞の苦しみに胸が痛まないのか?
 

(6) Rashid Buttar(ラシド・バター)

 現役医師。肩書は(1)のメルコラ医師、(4)のシェリ・テンペニーに続きDO! ここまで登場した医師は全員MDではなくDO。何か医師になるトレーニングの過程で反ワクチンとか代替医療に走りたくなる要素があるのか?
 ラシド・バターは、2010年に以下の本を出版しています。

 タイトルを訳すと、『医者いらずになる9つのステップ:長寿のために心身を超健康に変えるちょっとした行動』、みたいな感じか。9ステップのちょっとした行動で超健康か!読まないと!となりかけますが、結構平凡です。運動して食事に気をつけて水飲んで・・・みたいな・・・。デトックスにページが割かれているところがさすがドクター・バター。彼は、キレーション療法の信奉者で、自身が診察するほぼすべての患者に金属毒性があるという診断を下し、高額なキレーション療法をほどこし、苦情が寄せられている医師なのです。がんや自閉症の人をおびき寄せている。
 私も数年前に、子供の自閉症が受け入れられず、藁にもすがる思いだった時に、この医師とそっくりなことをやっている医者にひっかかったことがあった。なので、このバター医師に対する患者の苦情案件を読んでいて、何か懐かしいものを覚えた。「効果のほどは不明だが大きな害も無いだろう」というような療法で、私も言われるがままに自閉症の子供にビタミン注射打ったり、極端な食事療法をやったり、それで栄養が偏るのを防ぐためと称するサプリメントを買わされたり、結構なお金をとられたっけ・・・。次はキレーションが来るなという段階で、何かおかしいとピンと来てやめましたが。しばらくは金返せ!!と腹が立って仕方なかったなあ・・・貧乏人からふんだくりやがって~! 代替医療・・・高いんですよ・・・貧乏人はお呼びじゃないなと思ったっけ。
 話題を本に戻します。
 本のそこかしこが、ご自身運営の組織「Center for Advanced Medicine and Clinical Research(先端医療・臨床研究センター)」とその関係者、自身のウェブサイトに誘導する作りになっていて、さすがの商売上手。ビジネスの匂いがぷんぷんと漂ってきます。本のタイトルは、『ラシド・バター以外の医者いらずになる9つのステップ:ラシド・バターを超金持ちに変えるちょっとした貢ぎ方』に変えたほうがいい。
 パンデミック中は、せっせとソーシャル・メディアで反ワクチン活動。ちまちま活字で訴えても儲けにつながらない、と文章には見切りをつけ、ひたすら動画に誘導しているところがさすが。こんな長文ブログを書いていては乗り遅れる、となぜか私まで動画作りに走りそうになる。
 現在は、すごいフォロワー数・視聴者数だったインスタグラム、Facebook、Youtubeもアカウントを停止されているけれど、Twitterだけはまだ投稿停止になっておらず、元気に反ワクチン情報を85万人のフォロワーに発信中。相変わらず動画に力を入れてますね。

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ラシド・バター医師のTwitterアカウントより 腕組みポーズで写真に写る男性多いですよね

 これまで登場したほかのDisinformation Dozenのメンバーに比べて、トンデモ度が低い論調のため、うっかり信用してしまいそうになるところが危険。言っていること書いていることのすべてが誤りとは言いませんが、州医事当局に患者から多数の苦情が寄せられ、何度も叱責を受けている医師という事をお忘れなく。

(7) Erin Elizabeth(エリン・エリザベス)

 Disinformation Dozenの中で美女枠(?)と言ったところか。
 健康情報のウェブサイト「Health Nut News」の運営者で同サイトの記事の執筆者。自称ジャーナリスト。2014年から自身のサイトを開設し、現在まで大きく成長させている手腕は、まあすごい。長年に渡る代替医療とナチュラル・ヘルスの推進者で、(1)のメルコラ医師の彼女。ベッドに札束をばらまいて、高笑いしながらシャンペン開けていそうなイメージなお二人です。
 書籍は・・・・・・彼女のウェブサイトのニューズレターを購読するとただで読めます。「体重減少、ワクチン被害、ライム病をいかに克服したか」が記されているそうです。
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電子のみ

 「私は何も売りつけません、ただあなたの健康のために提案をするだけ」と動画で語っておられますが、なんかお金とられそうで怖くて読めない。
 動画やウェブサイトの記事を読む限り、誠実そうな美女に見えるんですが、高級コールガールから現在の地位までのし上がったという、まるで小説の主人公のような噂もある。
 削除された過去のインスタではこんなアートを喜んで載せているし、ウェブサイトでは「5G」から身を守る「何か」を売っているし・・・。

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エリン・エリザベスさん主宰Health Nut Newsのインスタグラム投稿より

 もう・・・何を信じていいのかわからない・・・。

(8) Sayer Ji(セイヤー・ジ)

 この後に登場するケリー・ブローガンさんの夫。

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セイヤー・ジさん アマゾンの商品紹介ページより

 この人は、以下の『Regenerate: Unlocking Your Body's Radical Resilience through the New Biology 』のほか、がんに関する本も共著で出している。

 2020年3月刊行。タイトルは、直訳すると「再生:新たな生物学により、体の本来の回復力を解き放とう」みたいな感じか。しかし、医師でも生物学者でも無く、哲学の学位を持つ、代替医療業界やサプリ・健康食品業界のロビー団体の重役。思想的にナチュラル・ヘルスに傾倒しているだけで、科学や医学のバックグラウンドは無い。健康情報の人気サイトGreenMedInfoの運営者。
 著作は、昨年刊行の新しい本ながらレビューも多く、その大半も好意的な内容。ちょっと読んでみたけれど、私にはちんぷんかんぷんな内容・・・。「昔ながらの食生活にかえろう、体本来の力を引き出そう」みたいな、うちの母親が読んだら喜びそうなことを、小難しい専門用語満載で薦めているような本。
 ワクチンに関する誤情報は、著作ではなくやはりソーシャル・メディアを中心に展開している。「ワクチン投与開始後、高齢者層のワクチンによる死は、コロナによる死より多い」などと、そうだったら大変じゃないかという情報を堂々と投稿。そんなことどうやって調べたの?
 反ワクチン誤情報も問題ながら、この方の場合、反マスクキャンペーンもすごい。本当にマスクがお嫌いのようで・・・。古来の食生活で、マスクもワクチンもなしでウィルスと戦えというのか。そんな勇気無いなあ・・・。

(9) Kelly Brogan(ケリー・ブローガン)

 Disinformation Dozenの精神医学枠担当。(8)のセイヤー・ジの妻。医師免許保持者、しかも、他のDisinformaiton Doven中の医師の多くがDO医師の中、この方はMD(医学博士)。精神科医を自称していたけれど、精神科医の診療に必要なライセンスの更新が行われておらず、そこをつっこまれてウェブサイトから精神科医の肩書きをついに削除。現在は実際に患者を診ているかは不明で、ヒーリング・グループの教祖様役や、グィネス・パルトロウのライフ・スタイル・ブランドのウェブサイトに寄稿したり、著作で稼いだり、自身のライフスタイル・プログラムの会員費でがっぽがっぽと稼いでいる。
 夫セイヤー・ジの主張が「薬やワクチンに頼らず、自然な方法で体を健康にしよう」だとすると、妻のほうはその精神医学バージョン。「精神的な病を適切な栄養やらデトックス、瞑想やヨガで治そう」というような主張。
 著作でも、抗精神病薬、特にうつ病薬に関して懐疑的。

 くやしいことに、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー!! う、うらやましい・・・。
 ここでやめておけばいいものを、「精神病は気のせい」→「コロナは気のせい」、つまりコロナウィルスによる死は存在しない説を主張。現在、報道されている死亡例は「ウィルスではなくて、ウィルスへの恐怖心のせい」、あるいは政府や製薬会社が報道をコントロールしているだけだそうで・・・。コロナ全否定。反マスク情報の拡散もすごい。

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ウィルスは作り話だと主張する、アマゾンでも入手できない本を真剣に薦めるケリー・ブローガン。我々は洗脳されているそうです。

 ちゃんと医学部出ているのに・・・臨床の現場で奮闘している同期がいるはずでしょ。セレブの教祖様だから、同期とは言え一般大衆とは連絡もとらないのか。
 インスタやウェブサイトも、画像のモデルはご自身(と夫)で、自分が大好きなのがひしひしと伝わる。

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ケリー・ブローガンのインスタグラム、まだアカウント止められていない
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ウェブサイトの会員勧誘ページはご自身のこんな画像ばかり・・・ちょっと怖い

 なんか・・・こんなに自己肯定感高くなれるんなら、月75ドル払って会員になって教祖様のライフスタイルを真似てみようかしら・・・とうっかり会員登録しそうになる。こんなのにはまったらすごく深そう。怖い怖い・・・

(10) Christiane Northrup(クリスティアン・ノースラップ)

 Disinformation Dozenで、中高年女性担当か。学位はMD、専門は産婦人科。著名な医師で、日本でも複数の書籍が刊行されている。

 上記の二冊はアメリカでもよく売れ、両方とも「ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー」。更年期の本のほうは、希少な「ナンバー1・ニューヨークタイムズ・ベストセラー」。邦訳されていないベストセラー本もまだある。
 オプラ・ウィンフリーの番組や、モーニング・ショーなんかにも出演したり、女性の健康に関するエキスパートのはずなんですが・・・なぜどうしてこうなった? 陰謀論のエキスパートになっていやしませんか、この方。というか、ファンタジー・ワールドの住人? 星占いとかタロット・カードとかタイム・トラベルとか生まれ変わりとか・・・。
 この方自身も不可解ですが、そんなファンタジーな投稿を多数投下していても(現在は慌てて削除)、Facebookには500万人(!)を超えるフォロワーがいるし、Twitterでもフォロワー多数(インスタグラムのアカウントは停止された)という、その人気もなんというか夢か現実かというレベル。インスタのアカウント停止が応えたのか、最近は反ワクチンはやめて、5Gに関する恐怖をあおる戦略に切り替えたようですが。
 この方、医師はやめて作家になったらいいのでは・・・。展開している陰謀論がまるでSFのよう。なんでも、どこかの製薬会社が特許をとったワクチンを体内に注入したら、それにはAIが入っていて、後はその製薬会社の思うままに操られてしまうんだとか。ワクチンは人類を間引きするの有効手段で、間引きを生き抜いても、その後は奴隷化され独裁者の管理下・監視下に置かれるんだとか。クリエイティブだなあとは思いますが・・・。

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さわやかな色合いの表紙が怖い

 最近は『A Mom's Guide to the COVID Shot』なる本を刊行されたようですが、フィクションの棚に置いたほうがいいんじゃないでしょうか・・・。

(11) Ben Tapper(ベン・タッパー)

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「Disinformation Dozenの12人だけじゃないぞ!」と訴える「More than 12」シャツを着用

 ネブラスカ州のカイロプラクター。「ドクター・ベン・タッパー」を自称しているけれど、医者ではない。ここらへんになってくると、一気に小者感が増し、この人が本当にそんな影響力あるのか疑問に思えてくる。当然ながら著作などは無く、活躍(?)の舞台はソーシャル・メディアや、反ワクチン信者を集めた集会。現在はTwitter、インスタグラムのアカウントは停止されている。Facebookのフォロワーは1万2000人・・・ひとつ前のファンタジーな女医と比べると寂しい数。これぐらいのフォロワー数だと削除されないのか。
 多分この人、Disinformation Dozenに選ばれて、すごく嬉しいと思いますよ。一躍地元の有名人で診療所も患者が増えているはず・・・。

(12) Kevin Jenkins(ケヴィン・ジェンキンス)

 (5)のリザ・イスラムに続き、黒人層担当と思われます。しかし、リザ・イスラムと違って比較的穏健。どういう人物なのかは、かなり謎に包まれていてわからない。経歴らしい経歴が無い。プロの活動家?? 
 Twitter、インスタグラム、Facebook、すべてアカウントは停止されておらず、反ワクチン、反・コロナによる行動制限の活動に励んでおられます。
 Twitterでは、「人道主義者、CEO、プロデューサー」と自己紹介。

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ケヴィン・ジェンキンスのTwiterより

 Facebookでは、「Motivational Speaker」。

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ケヴィン・ジェンキンズさんFacebookより

 もしかして、こういう活動がお仕事なんだろうか。最近は、(2)のロバート・ケネディ・ジュニアみたいな大物と組んだりして反ワクチン活動しているみたいだし。
 それほどトンデモ情報をまき散らしているわけではないけれど、まるでワクチンで黒人層が特にひどい目にあうような論調であることは確か。
 まだまだ著作を出版するところまでは台頭していない。出世が必要。

著者をググってから読みましょう

 個性あふれる12人、本当にお互いに役割を侵害しないようにそれぞれターゲットを見つけながら協力し合っていて、12人の間の関係も興味深い。お互いの本に推薦文を書いていたり、引用し合ったり。この12人に関する、小説の人間相関図みたいなものが頭に浮かぶ。
 ソーシャルメディアにおけるインフルエンサーである12人だけど、著作の数や雰囲気、売れ行きなどからもDisinformation Industry(偽情報産業)において彼らそれぞれがどれくらいの立ち位置なのかよくわかると思う。
 文章や映像、音声を誰にチェックされることもなくすぐにアップロードして世界に発信できるインターネットに比べ、編集や校正などの複数の過程を通って出版される書籍のほうが情報としてしっかりしていて信用できる、と思ってしまうけれど、特に健康や医療に関する書籍は、読む前に著者のことをネットで検索しましょう。どういう人が書いているのかを、本にある著者紹介以外で知る必要があると思います。ひどいのになると、○○博士として著者紹介されているのに、その名前で論文検索しても一つも出て来ない、つまりその分野の博士課程を本当は修了していないか、学位授与の審査に通っていないか、あるいは著者が実在しないのではないかというような疑惑を呈されている本もあるくらいです。あと、上記12人の一部がそうであるように、患者や消費者から訴えられている例も検索にひっかかるかもしれません。それを知って読むのと、知らないで読むのとでは内容への信用度が段違いでしょう。

ワクチンを打たない人と敬意ある対話を

 ワクチンやコロナに関しては、本当にどの情報を信じていいのかわからないし、それぞれにいろんな考えがあると思います。
 私は、コロナはただの風邪とは思っていないし、マスク着用も感染拡大防止に有効だと思っているし、ワクチンもさっさと打ったけれど、今回上記12人の主張をいろいろ読んでいて、一部、理解できたり共感できたりするところもあったし、代替医療推進派のライフスタイルでこういうのいいなあと思えるものもありました。全部が全部間違っているというわけではない。そこが難しい。そうなんだよね、と納得できるような主張の中に、まったく事実と違う情報が紛れ込んでいるという感じです。

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(11)のベン・タッパーさんのFacebookより 「医者が吸うタバコ、キャメル」みたいな内容の広告

 上記は、(11)で登場したベン・タッパーの投稿ですが、これを言われると頭が痛い。ひと昔前まではこんな広告がまかり通っていた。煙草の健康被害がちゃんと論じられるようになるまで、政府や医者がそれに取り組むまでに、結構な時間がかかった、そんな例だって過去にあるわけです。それを思うと、今、当然のように「正しい」「当然」とされていることだって、本当はどうなのかは誰にもわからない。政府や権威、科学を妄信するのも全否定するのも、どちらも間違っていて、両方に常に疑問を持ちながら自分で考える柔軟な頭が必要だなと痛感しました。

 日本もアメリカも、ワクチンの接種・未接種で二分化されていて、とくに接種済みの人が未接種の人を馬鹿にしたり、理解不能な存在と考えて距離を置いているところがあるように思います。
 確かに、未接種の人が多いと、重症化するケースが増え、医療がひっ迫し、それを防ぐための行動制限や休校など、接種完了者の生活にも支障が出てきます。リスクを負って接種した人が、「いつまで我慢させるんだ、打てる人が全員接種すりゃいいだけなのに」となる怒りもわかります。

 しかし、先日、ラジオである医師が言った言葉が印象に残りました。

「恫喝でワクチンを接種させることはできない」

これです。ワクチンを打たない人たちは、何も全員が全員ファンタジーな陰謀論を信じているというわけじゃない。なんとなく嫌なニュースが耳に入って不安だったり、副反応がきつくても仕事を休めない職種の人で接種のタイミングを計るのが難しいだけかもしれない。もう少し経ったら打とう・・・と考えているうちに時間が経ってしまったのかもしれない。

 だから、馬鹿にしたり、見下したりしないで、事情や理由をいろいろ語り合ってみて欲しいです。もし、反ワクチンの本を読んでいたら、自分も読んで、さりげなく、

「ワクチン、怖いよねー。でも、この著者、ネットで問題になっている人みたいだよ、ちょっと事実を盛って書いていたり、間違えているところもあったよ」

と教えてあげるとか・・・。

ああ、もうほんとに・・・

コロナウィルス、どっか行け!!! 失せろ!!! 要らない!!!

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